東芝情報システム株式会社

モデルベース開発とは?
メリット・デメリットや導入の課題などを徹底解説 第3回 (全4回)

モデルベース開発とは?メリット・デメリットや導入の課題などを徹底解説

第2回目では、モデルベース開発のメリット・デメリット、向いている分野、向いていない分野について詳しくご紹介しました。

第3回目では、モデルベース開発が必要とされる理由とモデルベース開発の歴史についてご紹介します。

モデルベース開発が必要な理由

それでは、モデルベース開発が必要とされている理由をご紹介しましょう。

開発期間短縮

多種多様な市場のニーズにこたえるため、製品の開発サイクルが短くなってきています。開発期間が比較的長い複雑な制御を伴う製品に対しても、開発サイクルの短縮要求が高まっています。自動車の場合でも他社との競争優位性を確保するために、マイナーチェンジが頻繁行われるようになってきています。

このため、開発期間の短縮できるモデルベース開発の需要が高まっています。これまでにもご紹介しましたが、モデルベース開発はシミュレーションを活用することで設計品質の向上、後戻り工数の削減、自動コード生成による効率化、シミュレータの活用による検証工程の短縮、試作回数の削減など開発プロセスとして定着すれば開発期間短縮する効果が大きいため注目を集めています。自動車の場合はマイナチェンジの頻度を上げることができるのは、モデルベース開発導入と相関関係があると思われます。

厳しくなる製品規制

製品の規制が厳しくなると検証項目が膨大な数となります。試作品を作成して検証を繰り返して、その評価を設計にフィードバックして、さらに試作品を作成し検証する……。このようなサイクルを繰り返していては、リードタイムの短縮を望むことはできません。

顕著な例が、自動車の排ガス規制です。大気汚染防止法が成立したのは1968年ですが、1980年以降毎年のように強化され、1997年にはハイブリッド車に対する規制も盛りこまれています。2000年には現在の一般乗用車のベースとなる規制ができあがっています。

繰り返される規制の強化をクリアするために、車載システム開発ではモデルベース開発の導入が進められてきました。

自動車用機能安全規格 ISO 26262

ISO 26262 は、機能安全の国際規格である IEC61508 を自動車向分野に適応したものであり、自動車に搭載される電気/電子制御システムに対する機能安全規格です。機能安全とは、安全な製品を開発するために有効と考えられる管理や手法適用を定めたものです。安全に関係する事項を極力網羅的に検討・考慮し安全な製品の開発を促すために考えられた規格です。

ISO 26262 は、2011年11月に制定され、自動車業界ではこの規格を標準として順守していく方向にあります。ISO 26262 の規格にはトレーサビリティの確保やシミュレーションやフォールトインジェクションによる検証のなどが推奨されています。従来型の開発では、これらの規定への対応が難しかったのですが、モデルベース開発を採用することによって解決できるものも多いことから、自動車業界ではモデルベース開発の積極的な導入のきっかけになっています。

モデルの部品化・標準化と流通

自動車や航空機など、すそ野の広い産業構造の業界では、メーカーに直接納入する一次サプライヤーをティア1と呼び、その下にティア2が続きます。これら部品のサプライヤー間では、部品の低コスト化、短納期化、品質維持を目的に、標準化が進められています。国際競争力を上げる戦略として、政府が一部先導して標準化を進めている業界さえあります。

経済産業省から2018年4月に"自動車産業におけるモデル利用のあり方に関する研究会今後の方針『SURIAWASE2.0の深化』をとりまとめました"と発表がありました。この中では以下のことが取りまとめられています。

  1. 研究会参加企業は、今般策定したガイドライン・準拠モデルを統一的な考え方として、モデル流通を進めるとともに、国際連携を見据えた方策を検討する。
  2. 研究会に参加している自動車メーカーは、自社内外双方のモデル流通に加え、シミュレーションを活用した開発の効率化に係る中小部品メーカーへの浸透や、産学連携等に対し、積極的役割を果たす。
  3. 国は、シミュレーションを活用した開発の高度化に向けて、人材育成や部品メーカー支援等、産学と連携し多面的に支援する。

出典:経済産業省ウェブサイト
http://www.meti.go.jp/press/2018/04/20180404003/20180404003.html

このように自動車業界ではモデルベース開発を基軸に産官学一体になって国際競争力を高めようという動きがあります。

今後、モデルベース開発が定着し標準化が進むと、モデルの流通が始まります。自動車メーカはサプライヤの部品を評価するために、まずモデルの提示を求めるようになると考えられます。そうすることにより、自動車メーカは試作車を作る前にシミュレーション上でバーチャルカーを走らせ、各部品の評価を行うことができるようになります。サプライヤは試作品を提供する前に自動車メーカに評価してもらうことができるため、開発の早い段階で製品へのフィードバックを行うことができるようになります。このように需給双方にとって、開発期間の短縮、コストの削減につながり、大きなメリットと競争力を手に入れることができます。こういった理由からモデルベース開発は今後ますます拡大していくと考えられます。

モデルベース開発の歴史と背景

歴史を振り返って、モデルベース開発の歩みを確認してみます。前身となるのはオブジェクト指向の表現モデル、具体的にはUML記述による組込みソフトウェアのモデルです。

UMLでは、プログラムコードを記述するのではなく、標準化されたモデル表現により、仕様の内容や設計情報を明確化することを可能としました。UMLは1990年代から活用が本格化し、プログラムの矛盾点などのエラーをチェックする機能があり、開発の初期段階でシステム構想を整理するために利用されました。これをベースに1990年代後半、シミュレーション機能が搭載され、モデルベース開発の原型が整っていきます。

モデルベース開発の進歩をリードしてきたのは自動車産業でした。1990年代の後半、エンジンの排ガス規制が厳しくなり、メーカーはその規制をクリアさせながら燃費を向上させなければなりません。制御要素が膨大な数に及び、試作と仕様修正を繰り返すことになり、この工数の削減のために考案されたのがモデルベース開発だったのです。

モデルベース開発により検証工程を削減できるとともに、煩雑だったサプライヤーとのコミュニケーション齟齬も防ぐことができると考えられるようになりました。

排ガス規制はますます厳しくなり、2000年ごろには一部のメーカーの成功事例を学習し、車載機器業界にモデルベース開発が広がっていくことになります。

自動車業界では技術革新が続けざまに起こりました。その1つが2000年初頭の電気自動車やハイブリッドカーなどエンジン以外で走る車の登場、そして2010年になってADAS(先進運転支援システム)によってさらにモデルベース開発の重要性が広がっていきました。同時にモデルベース開発の有用性も認められるようになり、2015年ごろからは医療システムや鉄道業界での採用も見られるようになっています。


以上がモデルベース開発の「必要とされる理由」と「歴史」です。
それでは、次回はどのようにしてモデルベース開発を導入すれば良いのかの導入方法についてご紹介します。

「第4回 モデルベース開発の2つの導入方法」へ

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