東芝情報システム株式会社

エッジAI技術への取り組み

エッジAI技術への取り組み

エッジAIとは

これまでAI技術は一般的にクラウドプラットフォーム上のサービスとして利用されてきましたが、最近ではエッジAIというものが注目されています。

クラウドAIは、ユーザから受けっとったデータをクラウドサーバに集積し、AIによる推論を行い、ユーザにAI推論結果を返します。クラウドでAI処理を行うため、クラウドプラットフォームの豊富な計算リソース(CPUやGPU)を必要な分だけ利用できるメリットがありますが、クラウドと通信するためリアルタイムの応答が求められるサービスには応用できませんでした。

このようなクラウドAIの弱点を補完するため、現場に設置した端末(エッジ端末)でAIによる推論を行うエッジAI技術が注目されています。エッジAIはデータが発生する現場でリアルタイムにAI処理を行うめ、自動運転や産業機器の制御など、リアルタイム制御が求められる分野にもAI技術の応用が進んでいます。ただし、クラウドプラットフォームのように豊富な計算リソースを使えず、エッジ端末の限られたリソースでAI処理を実現する必要があるためAI処理の得手不得手があり、さらにAIアルゴリズムの更新を行う場合はエッジ端末毎に更新・メンテナンスを行う必要があるということも忘れてはいけません。

クラウドAIとエッジAI
クラウドAIとエッジAI

このようなシステム構成の違いにより、クラウドAIとエッジAIは、メリット・デメリット比較の表 のようなメリット・デメリットがあるといわれています。

メリット・デメリット比較
メリット デメリット
クラウドAI AI処理に必要な計算リソースが豊富
(必要に応じて拡張可能)
通信による情報漏洩リスク
通信による応答速度遅延
通信コストが大きい
エッジAI リアルタイムに応答可能
通信コスト削減
通信による情報漏洩リスクが少ない
AI処理に必要な計算リソースが限定的
エッジ端末毎に更新・メンテナンスを行う必要がある

次に、AI処理の具体的な事例として、来訪者をサーモカメラで撮影し体温測定を行うシステムを想定し、クラウドAIで実現した場合とエッジAIで実現した場合を比較してみます。

クラウドAIシステム

クラウドAIを使って、サーモカメラを使った体温測定器システムを実現する場合、システムは以下の順に動作します。

  1. エッジ端末のカメラでユーザを撮影
  2. 撮影したサーモ画像をクラウドサーバに送信
  3. クラウドサーバでAI技術を使った顔認識処理を行い、体温を測定するための顔の位置を判定
  4. エッジ端末に体温測定結果を返し、ユーザに通知

この場合、リソースが豊富なデータセンターなどで処理を行うため、AI処理に必要な計算リソースの心配はありませんが、クラウドに送信する画像データの通信コストが膨らんでしまう問題や、クラウドとの通信で、体温測定結果を返すまでに時間がかかるといった問題が発生します。また、画像データの通信による情報漏洩のリスクも大きくなります。

クラウドAIシステム
クラウドにデータを送り、判定結果を受け取る

エッジAIシステム

エッジAIを使って、サーモカメラを使った体温測定器システムを実現する場合、システムは以下の順に動作します。

  1. エッジ端末のカメラでユーザを撮影
  2. エッジ端末でAI技術を使った顔認識処理を行い、体温を測定する顔の位置を判定
  3. エッジ端末で体温の測定結果を表示

エッジ端末にAI処理専用のハードウェアを搭載していればリアルタイムにAI処理を行うことができ、即座に体温測定結果を出すことができます。また、クラウドにカメラ撮影画像を送信する必要が無いため、通信コストを大きく削減でき、画像データが漏洩してしまうリスクも低減できます。

エッジAIシステム
クラウドにデータを送らずにその場で判定結果が分かる

エッジAIシステムの構築技術

AIモデルの構築

先ほど例に挙げた体温測定システムのように、AI技術を用いることで、カメラに映った人物や顔の位置を判別することができます。この技術は物体検出技術を呼ばれており、多方面で実用化されています。

物体検出システムを動作させるためにはAIに検出対象(体温測定システムの例では人の顔)を学習させて構築したAIモデルが必要になります。このAIモデル構築は、次のような開発工程となります。

AIモデルの構築
AIモデルの構築
モデル設計

AIシステムの要件分析後、要件を満たすAIモデルの設計が必要になります。自前でモデル設計を行うことで目的に応じたAIモデルを構築できますが、設計・開発コストは大きくなります。目的に応じてオープンソースで公開されているAIモデルを選定し活用することモデル設計作業の効率化になることもあります。

データ作成

検出対象をAIに学習させるため、まず学習用の画像を大量に収集する必要があります。AI学習用の画像は、世の中で公開されているオープンなデータセットもあり、これらを活用できる場合は容易に画像データを集めることができます。データセットが存在しない場合やデータのライセンス条項に合わない場合(商用利用不可など)、学習用の画像データを自前で撮影するなどして収集しなければなりません。

学習

集めた画像をAIに学習させるためには画像を繰り返し解析させる必要があり、膨大な計算リソースが必要になります。多くの場合AIモデルの学習ではGPUなどのAI学習に特化したハードウェアを搭載したマシンを長期間動作させる必要があり、大きなコストがかかります。

デバイス実装・推論・評価

学習したモデルをエッジAI端末に移植し、推論動作と評価を行います。評価の結果、要件を満たす性能が実現できていなければ、再度モデル設計、データ作成工程に戻り、AIモデルの性能改善に取り組む必要があります。

エッジAIシステムの端末選定

エッジAIシステムを構築するためには、現地でAI処理を行うエッジAI端末が必要になります。エッジAI端末を選定する上で大きく次の2つのポイントを検討する必要があります。

  • システム機能要件を満たすためのハードウェア性能
  • システムに求められる耐久性・信頼性

エッジAIシステムのカメラ選定

エッジAIで物体検出を実現する場合には端末にカメラを接続する必要があります。エッジAIで用いるカメラを選定する際は、カメラスペックについては特に画角(視野角)・解像度・照度に留意する必要があります。

このページでは、エッジAIについて、クラウドAIと比較して解説しました。次は、エッジAI技術への当社の取り組みについて適用事例をもちいてご紹介します。

エッジAI技術への取り組み 事例紹介

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