Bluetooth とは何か?第2回 [全3回]
Bluetooth Classic と Bluetooth Low Energy(BLE)の違い
第一回では、Bluetoothの特徴と歴史についてご紹介しました。
第二回は、Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyの主な違いと、また、開発するときにどちらを選べばよいかご紹介します。
Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyの違い
Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyの違い「同時接続デバイス数」
Bluetooth Classicのデバイスは、マスター(Master)とスレーブ(Slave)の2種類の役割があります。マスターとはコンピュータネットワークのクライアント/サーバにおけるサーバに相当するものです。一方、スレーブとはクライアントに相当するものです。マスターが同時に接続できるスレーブの数は最大7つまでとなっています。
一方、Bluetooth Low Energyのデバイスは、セントラル(Central)とペリフェラル(Peripheral)の2種類の役割があります。セントラルは、ネットワーク上の親局です。ペリフェラルに機能を提供してもらうサーバになります。スマートフォンやタブレットなどがセントラルになります。ペリフェラルは、ネットワーク上の子局の役目になります。体重計や体温計、スマートウォッチなどのセンサーの値やバッテリーの残量など、何かしらの情報や機能を提供するデバイスがペリフェラルになります。セントラルが同時に接続できるペリフェラルの数は、仕様上は無限ですがBluetoothチップとBluetoothスタックの実装仕様に依存します。
さらに、Bluetooth5では、メッシュネットワーク(多 対 多)を構築できるようになりました。たとえば、ビルの照明にBluetoothのメッシュネットワークを構築し、スマートフォンから照明の制御をしたり、また、照明のメッシュネットワークを利用し、遠くにある空調の温度調整パネルを制御したりすることが出来るようになります。
Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyの違い「転送速度」
Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyの転送速度は下表のとおりです。
バージョン |
非対称型通信時 |
対称型通信時 |
データレート |
---|---|---|---|
1.0 BR, 1.0B BR, |
下り 723.2kbps |
433.9kbps |
1Mbps |
2.0 EDR, 2.1 EDR, |
下り 2178.1kbps |
1306.9kbps |
3Mbps |
3.0 HS |
- |
- |
24Mbps |
*BR : Bluetooth Basic Rate
*EDR : Enhanced Data Rate
*HS : High Speed(無線LAN規格IEEE 802.11のMAC/PHY層を利用)
バージョン |
データレート |
4.0 |
1Mbps |
4.1 |
1Mbps |
4.2 |
1Mbps |
5 |
2Mbps, 1Mbps, 500kbps, 125kbps |
Bluetooth Classicの3.0 HSは、無線LAN規格IEEE 802.11のMAC/PHY層を利用する仕様になっています。Bluetooth 3.0 HS対応のBluetoothチップ(BluetoothとWi-Fiのコンボチップ)は存在しますが、現実には、ほとんどの製品でBluetoothとWi-Fiは各々のアプリケーションで使用されているため、Bluetooth 3.0 HSを利用している製品は、ほとんどありません。
Bluetooth 5のBluetooth Low Energyのデータレートが最大2Mbpsになったことで、従来のBluetooth ClassicのプロファイルがBluetooth Low Energyのプロファイルとして仕様策定、リリースされる可能性があります。
Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyの違い「消費電力」
Bluetooth Low Energyのペリフェラルデバイスは、電力消費を低減するために大半の時間をスリープモードで維持します。センサー変化などのイベントが発生したときにスリープモードが解除し(起き上がり)、スマートフォンやタブレットなどのセントラルデバイスにデータを転送します。
最大/ピーク電力消費は15mA未満、平均電力消費は約1μAとなっています。アクティブ時の電力消費はBluetooth Classicと比較して約1/10となっています。データ通信サイクルの低いアプリケーションでは、1個のボタン電池で、5~10年にわたって動作可能とされています。
仕様 |
Bluetooth Classic BR/EDR |
Bluetooth Low Energy 4.2 |
周波数帯 |
2.4GHz |
2.4GHz |
変調方式 |
周波数ホッピングスペクトラム拡散 |
GFSK |
チャネル数 |
79 |
40 |
チャネルポッピング |
タイムスロット(625μs) |
イベント(数ms) |
トポロジー |
スター型 |
スター型 |
同時接続デバイス数 |
最大7台 |
無限*1 |
ペアリング認証 |
必須 |
オプション |
音声対応 |
可 |
不可 |
最大パケットサイズ |
1024Byte |
251Byte(4.1以前は47Byte) |
最大通信距離(到達距離) |
100m以下*2 |
100m超*3 |
データレート |
1Mbps / 3Mbps |
1Mbps*4 |
実行最大通信速度 |
0.7Mbps / 2.1Mbps |
0.65Mbps(4.1以前は0.27Mbps) |
セキュリティ |
56/128ビット |
128ビットAES、CCMモード(Counter Mode CBC-MAC)利用 |
消費電力 |
1W |
0.01から0.5W |
ピーク電流 |
30mA未満 |
15mA未満 |
*1 BluetoothチップとBluetoothスタックの実装仕様に依存します。
*2 Classによって最大通信距離が変わります。
- Class1:最大出力の上限が 100mW で最大通信距離が 100m
- Class2:最大出力の上限が 2.5mW で最大通信距離が 10m
- Class3:最大出力の上限が 1mW で最大通信距離が 1m
*3 Bluetooth Low Energy 5ではデータレートによって最大通信距離が変わります。
- 2Mbps :最大出力の上限が 100mW で最大通信距離が 100m
- 1Mbps :最大出力の上限が 100mW で最大通信距離が 100m
- 125kbps:最大出力の上限が 100mW で最大通信距離が 400m
*4 Bluetooth Low Energy 5のデータレートは、2Mbps、1Mbps、500kbps、125kbps。
Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energy、どう選ぶか?
このように、Bluetooth ClassicとBluetooth Low Energyには、同時接続デバイス数と通信速度、消費電力の3つの大きな違いがあります。では、Bluetooth搭載の機器を開発する場合、どちらを選択すればよいのでしょうか?
今回、ご紹介した3つの違いがあるため、扱えるProfileに違いがあります。Profileとは、Bluetoothの機能を定義したものです。実現したい機能がどちらのProfileで対応しているかも確認が必要になります。
- Bluetooth Classicを活用した方が良い場合
-
Bluetooth Classicの場合、複数機能をもつProfileが多くあります。カーナビや、スマートフォンで利用する電話機能やオーディオ機能が利用できます。例えば、HFP(Hands-Free Profile)は、スマートフォンとヘッドセット間などで用いられる、電話の発着信や通話を行なうためのProfileです。
- Bluetooth Low Energyを活用した方が良い場合
-
Bluetooth Low Energyでは、単一機能のProfileが多いですが、動作させるのに製品のメモリをあまり必要とせず、Bluetooth チップ自体も安いものが多くあります。ウェアラブル端末、体温計、体重計などで利用するバイタルデータの送信を実現したい場合は、こちらが向いています。
Profileは、徐々に増えているため、開発する際には、どのような Profile がどちらに対応しているか、確認が必要でしょう。最新のProfile状況については、Bluetooth SIG で確認することができます。
今回は、Bluetooth Classic と Bluetooth Low Energy(BLE)の違いについてご紹介しました。次回は、Bluetooth のセキュリティについてご紹介します。
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