東芝情報システム株式会社

風を見える化し、データ化するIoTセンサー「anemolink™」

風向・風速計機器は、取り扱い、設置、データ収集の観点から課題が多いのが現状です。一方、オフィス・住環境・工場などの製造現場では空気の流れを確認したいというニーズが増えているほか、ウィズコロナ時代で換気の重要性が叫ばれています。anemolinkは置くだけで風向・風速を可視化できるIoTセンサーです。当社では産業分野での展開を中心に、お客様のニーズに合わせたanemolinkの活用提案を行っています。
LSIソリューション事業部
近藤 信一

LSIソリューション事業部
近藤 信一

気流測定の技術開発に取り組むようになったきっかけを教えてください

 例えば、ゴルフのプレー中に芝をちぎって風向きや風の強さを調べたり、高速道路を走行中に道路脇の吹き流しで風向きを確認したりすることがあると思います。また、毎日の天気予報で風向や風速を確認して暮らしに役立てることも多いことでしょう。しかし、日常生活では、室内の空気の流れを気にすることはそれほど多くないはずです。室内で気になるのは、むしろ空調による風の強さや流れがどのようになっているかで、空調機器での調節や、場合によっては窓の開閉による換気で対応することが多いと思います。このような話を異業種の方々が集まる意見交換会で住宅関連の方から聞くうちに、室内の微妙な気流を測定する術が意外にもないことがわかりました。

 最近の住宅は、気密性や断熱性を追求したものが多くなっていることから、アレルギー症状をともなうシックハウス症候群を訴える人が増えており、換気機器の設置や定期的な換気が義務化されるようになりました。そのため、室内の気流シミュレーションを把握することが求められるようになった一方で、建築段階でシミュレーションした気流が家具の配置などによって変わってしまい、換気機器の性能が十分に発揮されない事情も住宅関連の方から聞く事ができました。その話をうかがった時から、当社としてこれまで培ってきた技術を組み合わせれば、比較的簡単に室内の気流測定が可能ではないかと考え、産業分野の需要拡大も視野に基礎実験を進めることにしました。
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「anemolink」の開発プロセスについて聞かせてください

 開発を進めていく過程で、さまざまな風速計があることは確認できましたがコンパクトで簡単に使えるものはありませんでした。例えば風速と風向が同時に測定できるものは、高価で台車に載せて運搬するような大きさであったり、形状もプロペラで風を受け、風向や風速の変化を計るものがほとんどだったと思います。当社の開発コンセプトは、簡単で手軽に風向・風速を計測できるセンサーであると同時に、IoTデバイスとして計測データから新しい価値を見つけ出し、可能性を広げるオリジナルの環境センシングソリューションに取り組むことでした。こうしてanemolinkの開発が始まりました。

 anemolinkの開発初期段階では、産学連携で熱によって電気抵抗が変化する素子の「サーミスタ」を利用した風速計測技術の共同研究を行いました。ところがこの研究で目指した気流の三次元計測を実用化するには、応答速度や精度の面で課題が多く、開発に時間を要してしまうことがわかりました。そこで、当社はさまざまな技術調査を重ね、二次元計測でも多くのニーズに応えることができると判断し、スピード感を重視して独自に二次元計測を優先的に開発することにしました。その過程で採用したのがフローセンサー(気体流量センサー)です。評価の結果、高い性能が得られたこのセンサーを風速センサーとして応用する方法を開発し、anemolink-2Dが誕生しました。(図-1)
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セールスポイントや技術的な特徴を教えてください

 なんと言っても“置くだけ”で手軽に運用できることです。直径約9㎝で手のひらに乗るコンパクトな形状、しかもUSB給電なので設置する時のメリットが大きいことも特徴です。そして、もともと室内の換気や空調の気流測定をターゲットにしていたので、人が微かに感じる風をセンシングできる機能を備えています。高気密・高断熱住宅では、居住者は基本的に24時間窓を開けずに生活していますので、扇風機のような風を計測しても意味がありません。そこで、肌でわずかに感じ取れるような微風をターゲットにしました。

 気流の感知には4つのフローセンサーを使いました。そして、センサーの出力から風向と風速を求める独自の推論エンジンを開発しました。エンジンの開発では、精度を向上させるために教師データを使ったAIを採用し、社内で作った専用の風洞装置で評価実験を繰り返しました。風洞を用いた評価では良好な性能が得られていることを確認でき、精度の高い気流の可視化も実現できました。これにより微風でありながらもLEDが点灯する位置で風向を、点灯するLEDの輝度で風速を、また風がオーバーフロー状態の時は全LEDが点滅するようにできました。(図-2)
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 気流を可視化するだけではなく、データとして記録したいというニーズにも応えたのがanemolink-2Dの特徴です。人が不快になるほど風が吹いている、満足な換気ができていないなど、常時モニタリングすることでエアコンや換気機器との連動を可能にし、専用のロガーでデータを残せる機能を搭載しました。しかも、ロガーヘのデータ転送は無線で行いますので本体と離れた位置に設置できます。また、Windowsパソコンと接続すれば専用アプリで風向・風速のデータを確認することもできます。(図-3)
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 また、「換気」は新型コロナウィルスの感染拡大によって時代のキーワードになりました。今はイベントスペース、劇場、災害時の避難所、飲食店など、人が集まる場所では必ずコロナ対策が求められます。そこでanemolink-2Dは、風向・風速をLED表示する天板中央部で、感知したCO2濃度を表示できるようにしました。CO2濃度が濃くなると中央のランプが赤く光るので、換気とセットで考えれば、さらに参入分野の広がりが期待できます。

使い方提案も含め、anemolink-2Dは主にどの分野での活躍が見込まれますか

 当初は住宅内の気流測定を目的に開発したanemolink-2Dですが、その後すぐに製造業など、産業分野での需要が高いことが分かってきました。製造ラインでは、緻密な気流コントロールが製品の品質を大きく左右すると言っても過言ではありません。例えば、自動車本体やさまざまな機器の塗装工程で、気流によって違った色の塗料の細かな粒子が混じっただけで品質不良を招いてしまう恐れがあるほか、精密部品製造などを行うクリーンルームでは、ダストの管理においてさらにデリケートな気流確認が求められます。このように、室内環境における微風の可視化が、製造・加工品質を追求する産業分野が有望なターゲットであることを再確認し展開を図っています。(図-4)
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 また、見えないものをデータとして見える化し、新しい価値につなげるというIoT本来の考え方から、センサを内蔵した 920MHz LPWA の無線機「NetNucleus LPWA」と、取得したデータをクラウドに収集する機能、収集したデータを分析する機能を備えた「NetNucleus IoT」
を組み合わせた使い方も提案しています。(図-5)
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 さらに、今は二次元での測定ですが、anemolink-2Dを縦・横両方置くことで擬似的に三次元の気流シミュレーションデータを得ることも可能です。コンパクトで使う場所を選ばないanemolink-2Dは、今までの風向・風速計機器の概念を大きく変えるものです。当社ではこれからも、お客様のご使用環境に応じた使い方を積極的に提案していきたいと考えています。

※本記事は2021年12月に取材した内容をもとに構成しています。記事内における組織名、役職などは取材時のものです。
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