東芝情報システム株式会社

事例紹介エンベデッドソリューション

省電力無線メッシュネットワークを活用した農業倉庫の温湿度管理

農業倉庫保管管理日誌を自動で作成
10分間隔で各倉庫から温湿度データ収集、クラウドで蓄積管理

省電力無線メッシュネットワークを活用した農業倉庫の温湿度管理

滋賀県東北部、長浜市をエリアとする JA北びわこ。琵琶湖の湖畔から続く豊かな穀倉地帯にあって、地域の暮らしと営農・生活面にかかる情報提供の拠点となっている。
2020年6月施行のHACCP義務化を受けて、米穀を保管する農業倉庫における自主的な衛生・品質管理の在り方も大きな課題となっていた。
そこで JA北びわこの導入したのが、東芝情報システムの「省電力無線メッシュネットワーク」をベースとした「楽々日誌パナミエール」だ。保管米穀の品質管理が大幅な向上したのはもちろん、倉庫内の温湿度・穀温の計測、および保管管理日誌への記録を自動化することによって、日常業務の効率化が図れ、4人の担当者を 2名に削減することができた。

課題

農業倉庫の温湿度点検と日誌作成が、4人で分担して半日がかりの、手間のかかる作業となっていた。

解決

10分間隔の温湿度変化が見える化され、倉庫の問題発見や、温湿度管理品質の向上につながった。
温湿度点検と日誌作成が2人でできるようになり、大幅な省力化を実現した。

楽々日誌パナミエール

「楽々日誌パナミエール」は、温・湿度センサを各倉庫に設置、計測したデータをクラウドに蓄積し、事務所で集中管理できる農業倉庫向けのIoTシステムである。

2020年に国際衛生株式会社(以下、国際衛生)と全国農業協同組合連合会(以下、全農)が共同で企画したもので、東芝情報システムの「省電力無線メッシュネットワーク」がベースとなっている。「省電力無線メッシュネットワーク」は倉庫や工場など、広範囲なエリアにセンサ内蔵の無線機を分散させ、メッシュネットワークで収集したデータを中継器でまとめてクラウドに送信して、クラウドで蓄積・管理・見える化するIoTシステムである。無線機は極めて低消費電力であり単三乾電池で稼働するため、設置・メンテナンスも容易だ。

楽々日誌パナミエール

製品化に当たって、国際衛生は複数のIoTベンダに声をかけたが、対応力で抜きん出ていたのが東芝情報システムであった。国際衛生と全農の企画したシステムには、既存の温湿度センサのほか、米袋に刺して内部の温度を計測する「穀温計」が必要になる。この特殊な穀温計の開発が可能だったのは東芝情報システムだけであった。さらに、東芝情報システムは全農が指定している農業倉庫保管管理日誌の書式への出力にも対応した。
「楽々日誌パナミエール」は東芝情報システムが国際衛生にシステムを納め、国際衛生が機器の設置、メンテナンス、および導入倉庫の衛生チェックを提供し、全農が全国のJAに倉庫管理レベルの向上と業務の効率化のツールとして推進している。

楽々日誌パナミエール [国際衛生株式会社]

導入の背景

管理品質向上の余地と、農業倉庫保管管理日誌作成の手間

食品の品質管理が問われる時代となった。
GAP(Good Agricultural Practices:農業生産工程管理)では、農業における食品安全や環境保全のための生産の仕組みが求められている。HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:危害要因分析必須管理点)では、食品安全のための衛生管理が求められ、2020年6月から義務化された。これらを背景に、全農では消費者に安全な食品を提供する取り組みを推進している。

JA北びわこでは、6基の米専用の低温倉庫を持ち、15万袋を備蓄し管理している。米の品質管理を適切に行う観点から農業倉庫保管管理日誌の作成が必須となっており、6基の倉庫それぞれの温度・湿度・穀温(穀物の温度)を日々点検し記録を残してきた。

この作業を4人の職員が分担していたが、半日がかりの作業となっており、負担が大きかった。また、1日1回の点検であり、休日は点検できず、よりきめ細かな点検の仕組みを探していた。

導入の経緯

各倉庫に「楽々日誌パナミエール」を導入

2020年の秋、滋賀県内各JAが参加する米穀担当部署の部課長会議が開催された際、そこで紹介されたのが、農業倉庫管理サポートサービス「楽々日誌パナミエール」であった。

JA 北びわこ 導入設備
丸岡 重幸 様
営農経済部次長 兼 販売課課長
丸岡 重幸 様

「楽々日誌パナミエール」は中継器と穀温計3台(上・中・下)、温湿度計3台(倉庫内上・下、倉庫外)が1セットとなっている。
JA北びわこでは会議終了後に全農に相談し、1セットを試験的に採用、2021年3月から本格導入に入っている。
「解体予定の1基を除く、5基の倉庫に7セット『楽々日誌パナミエール』を導入しています」と、JA北びわこ 営農経済部次長 兼 販売課課長 丸岡 重幸氏は説明する。

導入効果

管理品質の向上と、日誌作成の省力化

毎日10分間隔にデータを収集することで、特定の倉庫で異常値が多いことを発見した。
「それまで問題ないと思っていた設備にも不具合の疑いが出てきました。温度はいいのですが、湿度が異常値を示していることがあり、ドア等の修繕の課題も見えてきました」と丸岡氏は語る。

竹原 正典 様
営農経済部販売課 係長
竹原 正典 様

「梅雨のころには落雷などによる突発的な停電もあります。それによる異常値の連絡も確実にエラーメールが届き、安心です。適切な対処が素早くできるようになりました」とJA北びわこ 営農経済部販売課 係長 竹原正典氏も補足する。

また、竹原氏は「管理者側で庫内の設定温度を変更することがあるのですが、それがどのように穀物に反映されていくのかを、10分間隔で把握できます。状況の変化を正確に把握しながら、きめ細やかな温湿度管理ができるようになりました」とも語る。

「点検と日誌作成が自動化できました。自動化させてはいますが、毎日、倉庫を見に行っています。しかし、4人の職員を当てていた点検と日誌作成が2人でできています。これが最大の効果です」と、丸岡氏は強調する。
外れた2人を別の業務に当てることができ、職員の有効活用が可能となった。

今後の活用

JAの経済事業の収支改善に貢献

出勤した日誌作成担当者の最初の業務が「楽々日誌パナミエール」の確認である。「楽々日誌パナミエール」はグラフ化されて表示されるので、状況の推移もビジュアルに把握できる。
JA北びわこでは「楽々日誌パナミエール」が有効に活用されているようだ。

例:楽々日誌パナミエール 管理画面

食品の品質管理の設備だけに、「楽々日誌パナミエール」には高度な安定性が求められるが、国際衛生が定期訪問(1回/6カ月)して衛生管理チェック、機器類の温度補正、電池交換サービスを提供している。機器とシステムの遠隔保守と故障修理にも対応しており、不安がない。

全農は地域のJAに「楽々日誌パナミエール」の導入を推奨している。
「JAの経済事業の収支改善は重要な課題です。そのためにも、日誌作成の自動化など、職員数の適正化は避けて通ることはできません。『楽々日誌パナミエール』を活用して、経済事業の健全化に取り組むべきではないでしょうか」と、最後に丸岡氏は呼びかけた。

顧客情報

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顧客名 北びわこ農業協同組合
所在地 滋賀県長浜市湖北町速水2721番地
設立

1997(平成9)年4月

長浜市(旧東浅井郡、旧伊香郡)内の7JA(浅井町農業協同組合、虎姫町農業協同組合、大郷農業協同組合、竹生農業協同組合、湖北町農業協同組合、高月町農業協同組合、伊香農業協同組合)が合併して設立
組合員数 正組合員 3,497名、准組合員 9,667名
事業内容 営農指導事業、生活指導事業、販売事業、利用事業・加工事業、購買事業、信用事業、共済事業
URL https://www.jakitabiwako.jp/
導入プロダクト 省電力無線メッシュネットワーク + IoTクラウドサービス

本記事は2021年7月に取材した内容をもとに構成しています。記事内における組織名、役職などは取材時のものです。

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