東芝情報システム株式会社

東芝情報システムと京都大学、 心拍変動のカオス性と脳の知的活動状態の関連性を示す

2026年03月26日

東芝情報システム株式会社

東芝情報システムと京都大学、
心拍変動のカオス性と脳の知的活動状態の関連性を示す

- 心拍から「こころ」の健康を探る -

東芝情報システム株式会社(本社:神奈川県 川崎市、取締役社長:根本 健、以下 東芝情報システム)と国立大学法人京都大学(以下、京都大学)大学院情報研究科(梅野健 教授)は、データのカオス性を定量化するカオス尺度、および複数のカオス分析指標を用いて心拍データを解析したところ、心拍変動と脳活動との関連を示す新たな知見を得ました。本研究成果は、Springer Natureの国際的学術誌Scientific Reportsに掲載されました。同誌は科学の全分野を扱い、厳格な査読を通じて研究の科学的妥当性を評価することで知られています。本研究の方法論および結果の信頼性が国際的に認められたこと、ならびに当社の研究開発力が国際水準にあることを意味します。

東芝情報システムはこれまで、京都大学との連携のもとで「修正カオス尺度」と呼ばれる独自のカオスの定量化手段を提案し、データ分析分野での活用拡大を進めてまいりました。今回の成果は、当研究の蓄積に基づき、東芝情報システムが目指すデータ分析技術としての価値を強化するものです。今後、東芝情報システムは、多様な産業分野での時系列データ分析ツールの開発・展開を進めてまいるとともに、生理学・医学関係者との連携をはかり、医療分野における応用の可能性を追求します。

研究の背景

近年、ウェアラブルデバイスの普及により、心拍などの生理信号データが日常的に取得できる環境が整いつつあります。一方で、脳活動の計測は設備コストが高く、計測中の被験者の行動が制限されるなど、日常生活での常時モニタリングや医療現場での簡易スクリーニングへの活用には依然として課題があります。

東芝情報システムは、京都大学との共同研究と当社社員の同学博士課程への進学を同時に進め、時系列データのカオス性/複雑さの定量的評価に関わる研究を推進し、「修正カオス尺度」と呼ばれる独自の定量化手段を提案しました[参考文献1-3]。すなわち、分析法の理論構築、計算アルゴリズムの改良、実データ分析への適用までの一貫した研究を基盤として、技術の精緻化と汎用化を重ねてきました。今回採録された論文は、前記「修正カオス尺度」を心拍データに適用することによって得られた新たな知見に基づくもので、心拍変動と脳活動の間にカオスが関与することを示しました。

研究成果

本研究では、27名の被験者を対象とした実験において、暗算やパズルなどの認知課題中の心拍データを、修正カオス尺度を含む複数のカオス分析指標を用いて解析しました。その結果、安静時と比較して、認知活動中の心拍変動におけるカオス分析指標が顕著に上昇することが明らかになりました。一方で、この変化は自律神経活動の評価に用いられる従来の心拍変動分析法では捉えにくいものでした。すなわち、カオス分析は新たな観点から心拍データの変動特性を捉えられる可能性があることを示しました(表1)。

表1.2群間の差の統計検定結果
(Signed RankTest,有意水準1%)

考えられる応用

最新の脳科学分野の研究論文によると、こころの病を抱える人は健常者と比較して心拍の揺らぎが小さい(カオス性が低い)ことが報告されています[参考文献4,5]。したがって、心拍変動のカオス分析は「こころ」の健康(脳の健康)をあらわす指標として利用できる可能性があります。
さらに、東芝情報システムが保有するデータ分析技術とカオス分析を組み合わせることで、製造、金融、IoTなどの多様な産業領域のデータに対しても新たな洞察や知見が得られることが期待されます(図1)。

図1. 研究成果とその応用イメージ
図1.研究成果とその応用イメージ

今後の展望

東芝情報システムは、京都大学と密接に連携しながら、今回の成果を踏まえ、以下の2軸で取り組みを進めます。

1.医療分野での応用検討・連携強化

  • 医療機関や医学部など連携先の検討
  • 臨床データを用いた実証研究の検討
  • 医療現場での利用を想定した解析モデルの高度化

2.多領域向けカオス分析プラットフォームの開発

  • 製造、金融、IoTなど多様な産業データへの応用検討
  • カオス尺度を活用したAPI/SDKやクラウドサービスの開発
  • カオス分析ツールとしての製品化

今回の研究成果は、医療応用の可能性を示す初期成果であり、東芝情報システムはこの知見を土台として、医療分野に限らず多領域に対応したデータ分析技術の進化に貢献してまいります。

掲載された論文

タイトル:

Chaotic fluctuations mark the sign of mental activity in task-based heart rate variability(心拍変動のカオスゆらぎが、脳活動を検出する)

著者:

Tomoyuki Mao, Hidetoshi Okutomi and Ken Umeno

掲載誌:

Scientific Reports (2026)

参考文献

[文献1]

真尾, 奥富, 梅野, カオス尺度とリアプノフ指数の差の解釈に基づく修正カオス尺度の提案, 日本応用数理学会論文誌 (2019); 29:383-394. doi:10.11540/jsiamt.29.4_383

[文献2]

Mao T, Okutomi H, Umeno K, Investigation of the difference between Chaos Degree and Lyapunov exponent for asymmetric tent maps, JSIAM Letters (2019); 11:61-64. doi:10.14495/jsiaml.11.61

[文献3]

奥富, 真尾, 梅野, 有限分割のKolmogorov-Sinai エントロピーとカオス尺度, 日本応用数理学会2025年度年会 (2025); 応用カオス(1)-1

[文献4]

Majerova K, Zvarik M, Ricon-Becker I et al. Increased sympathetic modulation in breast cancer survivors determined by measurement of heart rate variability. Sci. Rep. (2022); 12:14666. doi:10.1038/s41598-022-18865-7

[文献5]

Čukić M, Savić D, Sidorova J. When Heart Beats Differently in Depression: Review of Nonlinear Heart Rate Variability Measures. JMIR Ment Health. (2023); 10:e40342. doi:10.2196/40342

参考情報

本研究の背景となる博士研究および研究開発の経緯については、当社の技術情報記事Digital Waveにて紹介しています。
https://www.tjsys.co.jp/digitalwave/gito_chaos.htm

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