サービス開始から15年!「ディスコンLSI再生サービス」の現在地と、今後の展望
製造中止となったLSI(大規模集積回路)の再開発を通じ、ものづくりの現場を支え続けてきた「ディスコンLSI再生サービス」。サービス開始から15年が経った現在も、特に産業機器を扱う企業を中心に根強いニーズがあります。設計データが一部しか残っていない、設計者が退職している、LSIの現物しか残っていないなど、厳しい条件下でも当社独自の解析技術を駆使してLSIの再生を実現しています。
今回は入社5年目で同サービスの現場を担う菅野さんに、「ディスコンLSI再生サービス」の事業内容や当社ならではの強み、そして今後の展望について伺いました。
今回は入社5年目で同サービスの現場を担う菅野さんに、「ディスコンLSI再生サービス」の事業内容や当社ならではの強み、そして今後の展望について伺いました。


LSIソリューション事業部
菅野 涼香
製造中止のLSIを延命! 【ディスコンLSI再生サービス】
ーはじめに、ディスコンLSI再生サービスとはどのようなサービスなのですか?

一言でいうと、製造中止となったLSIを再開発し、量産を継続可能にするサービスです。具体的には、お客様が過去に開発したLSIを、別の新しい製造プロセスで再構築することで、LSIの再生・延命を実現します。
※ ディスコン(Discontinue):製造終了(EOL)の略語です。
※ ディスコン(Discontinue):製造終了(EOL)の略語です。
ーディスコンLSI再生サービスが始まった背景を教えてください。
一般的に、各LSIベンダーの製造ラインは微細化が進む過程で、古いプロセスから順に廃止されていきます。古くなったプロセスでは製造量やユーザー数が減少してしまうため、需要が減少したベンダーは製造ラインの縮小を余儀なくされるのです。このようなベンダー側の事情により、「近年、EOL品(製造終了品)が増えて困っている」といったお客様の声が寄せられ、15年前に本サービスが誕生しました。
一般的に、各LSIベンダーの製造ラインは微細化が進む過程で、古いプロセスから順に廃止されていきます。古くなったプロセスでは製造量やユーザー数が減少してしまうため、需要が減少したベンダーは製造ラインの縮小を余儀なくされるのです。このようなベンダー側の事情により、「近年、EOL品(製造終了品)が増えて困っている」といったお客様の声が寄せられ、15年前に本サービスが誕生しました。

ーディスコンによって困っているお客様の傾向や業種はありますか?
「FA(ファクトリーオートメーション)系」と言われる産業機器を扱っているお客様が多いですね。産業機器は一度導入されると長く使われる傾向がありますが、内部に使用されているLSIが製造中止(ディスコン)になると、基板交換といったメンテナンスが困難になります。
最悪の場合は製品自体の置き換えが必要となることもあり、その対応コストは非常に高額になります。産業機械は数千万円を超えるものも多いため、FA系のお客様からは「メンテナンスに必要な基板に搭載されているLSIを再生したい」という要望が多く寄せられるのです。
当社の「ディスコンLSI再生サービス」であれば、製品本体はそのままに、LSIが搭載された基板のみを交換することが可能なため、大幅なコスト削減につながります。こうした点も含めて、当社にご相談いただいているのだと思います。
「FA(ファクトリーオートメーション)系」と言われる産業機器を扱っているお客様が多いですね。産業機器は一度導入されると長く使われる傾向がありますが、内部に使用されているLSIが製造中止(ディスコン)になると、基板交換といったメンテナンスが困難になります。
最悪の場合は製品自体の置き換えが必要となることもあり、その対応コストは非常に高額になります。産業機械は数千万円を超えるものも多いため、FA系のお客様からは「メンテナンスに必要な基板に搭載されているLSIを再生したい」という要望が多く寄せられるのです。
当社の「ディスコンLSI再生サービス」であれば、製品本体はそのままに、LSIが搭載された基板のみを交換することが可能なため、大幅なコスト削減につながります。こうした点も含めて、当社にご相談いただいているのだと思います。
“このLSIがないと製品が作れない…”ディスコンが突きつける現実と解決策
ー実際に再生された事例を3つほど教えてください。また再生にあたり困難なこともありましたか?
1つ目は、使用していたLSIがディスコンになり、ラストバイ(最終購入)を行ったものの、それも尽きてしまって当社にご相談いただいたケースです。
設計データは揃っていましたが、すべて紙媒体だったため回路の再入力が必要になり、電子的な回路図の復元に苦労しました。ただ、当社の「ディスコンLSI再生サービス」は保存形式を問わず再生が可能なため、入力後は問題なく対応できました。
2つ目は、LSIの回路や設計データが不明だったケースです。当時の設計者はすでに退職されていたため、当社の「LSI解析サービス」を活用し、LSIの現物から回路を再構築して再生しました。これはよくあるケースですね。
3つ目は、お客様の要求するパッケージが存在しなかったケースです。半導体はパッケージもディスコンになるのです。このときは、未使用の回路を削減することでパッケージのピン数を減らし、同等の機能を持つLSIとして再生しました。
1つ目は、使用していたLSIがディスコンになり、ラストバイ(最終購入)を行ったものの、それも尽きてしまって当社にご相談いただいたケースです。
設計データは揃っていましたが、すべて紙媒体だったため回路の再入力が必要になり、電子的な回路図の復元に苦労しました。ただ、当社の「ディスコンLSI再生サービス」は保存形式を問わず再生が可能なため、入力後は問題なく対応できました。
2つ目は、LSIの回路や設計データが不明だったケースです。当時の設計者はすでに退職されていたため、当社の「LSI解析サービス」を活用し、LSIの現物から回路を再構築して再生しました。これはよくあるケースですね。
3つ目は、お客様の要求するパッケージが存在しなかったケースです。半導体はパッケージもディスコンになるのです。このときは、未使用の回路を削減することでパッケージのピン数を減らし、同等の機能を持つLSIとして再生しました。

ー再生にあたって、特に難しいのはどのような点ですか?
残っているデータが最新かどうか不明な場合は、仕様書を読み解き、当社が回路や設計データの作成を行います。元の回路や設計データがまったく存在しないケースでは、LSIの現物から回路を再構築するため、再生までに時間を要します。これらはよくあるケースですが、再生までに少し時間がかかりますね。
また、LSIには大きく分けてデジタル製品とアナログ製品の2種類があります。デジタル回路は「1」か「0」のみで構成されており、「信号が通っているか・通っていないか」が明確なため、再現が比較的容易です。
一方、アナログ回路は電気特性の再現が難しくなります。アナログ信号は「0.5」や「1.8」のように数値が連続的に変化する特性を持っており、回路はこの特性を正確に再現しなければ正常に動作しません。さらに製造プロセスが変わると特性も変化するため、アナログ回路の場合は試作を複数回繰り返しながら特性を調整する作業が必要になります。アナログ製品については何回か試作を繰り返すので、再開発期間が長くなる傾向にありますね。
ーお客様から受けたご要望で、困った経験はありますか?
展示会などでお話ししている際に、お客様が再生を希望されるLSIが、本サービスの適用条件に合致しない場合があります。
当社の「ディスコンLSI再生サービス」は、お客様自身が過去に開発されたカスタムLSIやASICを対象としています。これに対し、たとえば「**メーカーの汎用LSIを再生してほしい」といった汎用品に関するご相談には対応できないので、心苦しく感じることがあります。そのLSIの権利がお客様ではなく他社にある場合、コピー品の製造に該当し、権利問題が発生する可能性があるためです。
ー現物から回路を再現する「LSI解析サービス」について教えてください。
残っているデータが最新かどうか不明な場合は、仕様書を読み解き、当社が回路や設計データの作成を行います。元の回路や設計データがまったく存在しないケースでは、LSIの現物から回路を再構築するため、再生までに時間を要します。これらはよくあるケースですが、再生までに少し時間がかかりますね。
また、LSIには大きく分けてデジタル製品とアナログ製品の2種類があります。デジタル回路は「1」か「0」のみで構成されており、「信号が通っているか・通っていないか」が明確なため、再現が比較的容易です。
一方、アナログ回路は電気特性の再現が難しくなります。アナログ信号は「0.5」や「1.8」のように数値が連続的に変化する特性を持っており、回路はこの特性を正確に再現しなければ正常に動作しません。さらに製造プロセスが変わると特性も変化するため、アナログ回路の場合は試作を複数回繰り返しながら特性を調整する作業が必要になります。アナログ製品については何回か試作を繰り返すので、再開発期間が長くなる傾向にありますね。
ーお客様から受けたご要望で、困った経験はありますか?
展示会などでお話ししている際に、お客様が再生を希望されるLSIが、本サービスの適用条件に合致しない場合があります。
当社の「ディスコンLSI再生サービス」は、お客様自身が過去に開発されたカスタムLSIやASICを対象としています。これに対し、たとえば「**メーカーの汎用LSIを再生してほしい」といった汎用品に関するご相談には対応できないので、心苦しく感じることがあります。そのLSIの権利がお客様ではなく他社にある場合、コピー品の製造に該当し、権利問題が発生する可能性があるためです。
ー現物から回路を再現する「LSI解析サービス」について教えてください。

当社の「LSI解析サービス」は、お客様からお預かりしたLSIを分解し、シリコンチップの各階層の表面を詳細に撮影することで、回路情報を抽出するサービスです。デジタルICであれば回路図またはRTL、アナログICであれば回路図を作成します。
このサービスを活用すれば、回路や設計データが存在しない場合や、当時の開発者がすでに退職されていてLSIの内部構造が不明な場合でも、LSIの再生が可能となります。数十年前のLSIであっても、再生できる可能性は十分にあります。
また、テストデータをご提供いただければ、抽出した回路を基にしたシミュレーションによる評価結果の提供や、FPGAの作成支援も可能です。
このサービスを活用すれば、回路や設計データが存在しない場合や、当時の開発者がすでに退職されていてLSIの内部構造が不明な場合でも、LSIの再生が可能となります。数十年前のLSIであっても、再生できる可能性は十分にあります。
また、テストデータをご提供いただければ、抽出した回路を基にしたシミュレーションによる評価結果の提供や、FPGAの作成支援も可能です。
生産中止になったLSIの再生が企業にもたらす3つのメリット
1.VA/CD効果
ーLSIの再生では、どのようなコストメリットがありますか?
LSIを再生する際、ほとんどの場合は当時に比べて開発費やロット単価が下がっているため、チップ単価も下がります。特に古い製品であるほどロット単価は下がっているため、旧製品の購入を継続するよりも、再生の方が大幅なコスト削減につながる可能性があります。
2.機能追加も可能な柔軟設計
ー機能追加に対応する場合、どのようなケースがありますか?
よくあるのが、「LSIの再生に伴い、周辺回路も取り込んでワンチップ化したい」というご要望です。一つのチップ内に周辺の部品や回路を集積することで、使用部品の削減につながり、部品コストだけでなく管理コストの削減も可能になります。トータルコストや基板面積の削減を目的として、機能追加をご依頼いただくケースも多く見受けられます。
過去には、既存のLSIに不具合があったお客様から、「LSIの再生時にその不具合も併せて修正してほしい」というご要望をいただいたこともあります。LSIの再設計には多大なコストがかかるため、不具合がある場合はソフトウェアで対応することが一般的ですが、「良い機会なので一緒に修正してしまおう」とお考えになるお客様もいらっしゃいます。これもある意味、機能追加ですね(笑)
ーLSIの再生では、どのようなコストメリットがありますか?
LSIを再生する際、ほとんどの場合は当時に比べて開発費やロット単価が下がっているため、チップ単価も下がります。特に古い製品であるほどロット単価は下がっているため、旧製品の購入を継続するよりも、再生の方が大幅なコスト削減につながる可能性があります。
2.機能追加も可能な柔軟設計
ー機能追加に対応する場合、どのようなケースがありますか?
よくあるのが、「LSIの再生に伴い、周辺回路も取り込んでワンチップ化したい」というご要望です。一つのチップ内に周辺の部品や回路を集積することで、使用部品の削減につながり、部品コストだけでなく管理コストの削減も可能になります。トータルコストや基板面積の削減を目的として、機能追加をご依頼いただくケースも多く見受けられます。
過去には、既存のLSIに不具合があったお客様から、「LSIの再生時にその不具合も併せて修正してほしい」というご要望をいただいたこともあります。LSIの再設計には多大なコストがかかるため、不具合がある場合はソフトウェアで対応することが一般的ですが、「良い機会なので一緒に修正してしまおう」とお考えになるお客様もいらっしゃいます。これもある意味、機能追加ですね(笑)

ー他にもお客様から寄せられたご相談はありますか?
「再生と同時に、動作周波数を上げてほしい」というご相談もよくいただきます。基板上にはさまざまな部品があり、各部品が同期して動作することで、信号が正確に伝達されます。昨今は技術の進歩によりCPUの処理速度が向上していますが、旧製品のLSIが低い周波数で動作している場合、CPUの性能を十分に発揮できません。そのため、CPUの速度に合わせて、LSIの動作周波数を向上させたいとお考えになるお客様もいらっしゃいます。
あとは再生時の数量(MOQ:最低発注数量)に関するご相談でしょうか。一般的なLSIの開発サービスでは、数万個単位からの発注しか受け付けないケースもありますが、当社の「ディスコンLSI再生サービス」であれば、一度限りの発注や、100個程度からの少量発注にも柔軟に対応可能です。
3.顧客製品の製造継続とサポート部品の維持
ーLSIの再生によって、製品やサービスの提供を継続できる価値についてどうお考えですか?
お客様のビジネス継続に寄与できる点は、非常に重要だと考えています。LSIがディスコンとなってしまっても、当社の「ディスコンLSI再生サービス」であれば、製品供給の停止や保守対応の中断を防ぐことが可能です。お客様のお悩みを解決し、事業の継続・拡大に貢献できることが、当社が提供する最大の価値だと捉えています。
「再生と同時に、動作周波数を上げてほしい」というご相談もよくいただきます。基板上にはさまざまな部品があり、各部品が同期して動作することで、信号が正確に伝達されます。昨今は技術の進歩によりCPUの処理速度が向上していますが、旧製品のLSIが低い周波数で動作している場合、CPUの性能を十分に発揮できません。そのため、CPUの速度に合わせて、LSIの動作周波数を向上させたいとお考えになるお客様もいらっしゃいます。
あとは再生時の数量(MOQ:最低発注数量)に関するご相談でしょうか。一般的なLSIの開発サービスでは、数万個単位からの発注しか受け付けないケースもありますが、当社の「ディスコンLSI再生サービス」であれば、一度限りの発注や、100個程度からの少量発注にも柔軟に対応可能です。
3.顧客製品の製造継続とサポート部品の維持
ーLSIの再生によって、製品やサービスの提供を継続できる価値についてどうお考えですか?
お客様のビジネス継続に寄与できる点は、非常に重要だと考えています。LSIがディスコンとなってしまっても、当社の「ディスコンLSI再生サービス」であれば、製品供給の停止や保守対応の中断を防ぐことが可能です。お客様のお悩みを解決し、事業の継続・拡大に貢献できることが、当社が提供する最大の価値だと捉えています。
“あのLSIはもう作れません”と言われても、まだ選択肢はある
ー今後このサービスをどのように展開していきたいですか?
メインのお客様である産業機器向けの市場というターゲットは維持しつつ、さまざまな提案をしていきたいと考えています。
当社では技術的に難しいと言われているアナログICの再開発にも、積極的に取り組んでいます。これまではデジタルICの再開発に多く対応してきましたが、今後はアナログICの再生においても、より幅広いご提案を行っていきたいと考えています。
ー技術継承や人材育成の面で取り組んでいることがあれば教えてください。
私たちの主力事業は、LSIの設計受託です。この事業で培った技術を社内で共有し、新たな技術の創出や人材育成につなげています。LSIの機能や用途はお客様によってさまざまです。経験豊富な技術者のもとに若手技術者を配置し、共同で開発を進めることで技術の継承を図ることを常に意識しています。
メインのお客様である産業機器向けの市場というターゲットは維持しつつ、さまざまな提案をしていきたいと考えています。
当社では技術的に難しいと言われているアナログICの再開発にも、積極的に取り組んでいます。これまではデジタルICの再開発に多く対応してきましたが、今後はアナログICの再生においても、より幅広いご提案を行っていきたいと考えています。
ー技術継承や人材育成の面で取り組んでいることがあれば教えてください。
私たちの主力事業は、LSIの設計受託です。この事業で培った技術を社内で共有し、新たな技術の創出や人材育成につなげています。LSIの機能や用途はお客様によってさまざまです。経験豊富な技術者のもとに若手技術者を配置し、共同で開発を進めることで技術の継承を図ることを常に意識しています。

ー最後に、製造や開発現場で困っている方に伝えたいことがあればお願いします。
当社の「ディスコンLSI再生サービス」は、LSIの再生だけでなく、周辺機能を取り込んだ再開発など、多様なご提案が可能です。回路や設計データが残っていなくても、「LSI解析サービス」を活用することで再生が可能となり、少量生産にも柔軟に対応できる点が当社ならではの強みです。
「使用しているLSIがディスコンになった」あるいは「ディスコンになる可能性がある」といった状況で、少しでも危機感を覚えたお客様は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。ディスコンに限らず、LSI開発に関するちょっとしたご質問でも結構です。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※記事内における内容、組織名などは2025年6月公開時のものです。
※本文中の会社名および製品名は各社が商標または登録商標として使用している場合があります。
当社の「ディスコンLSI再生サービス」は、LSIの再生だけでなく、周辺機能を取り込んだ再開発など、多様なご提案が可能です。回路や設計データが残っていなくても、「LSI解析サービス」を活用することで再生が可能となり、少量生産にも柔軟に対応できる点が当社ならではの強みです。
「使用しているLSIがディスコンになった」あるいは「ディスコンになる可能性がある」といった状況で、少しでも危機感を覚えたお客様は、ぜひ一度ご相談いただければと思います。ディスコンに限らず、LSI開発に関するちょっとしたご質問でも結構です。ご興味をお持ちの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
※記事内における内容、組織名などは2025年6月公開時のものです。
※本文中の会社名および製品名は各社が商標または登録商標として使用している場合があります。