東芝情報システム株式会社

空間を理解する"技術へ─TOSHIBA LiDAR ミドルウェアが切り拓く新たな可能性

社会インフラや産業現場では、安全性の確保や省人化、効率化に向けて、周囲の状況を正確に把握する技術の重要性が高まっています。その中で注目されているのが、レーザー光を用いて空間を三次元で捉えるLiDAR(ライダー)です。

一方で、LiDARが取得する点群データは、そのままでは現場で活用しにくく、対象の認識や追跡、ノイズ低減、既存システムとの連携など、実運用に向けた処理が必要になります。そこで開発されたのが、TOSHIBA LiDARと連携するミドルウェアです。

本記事では、TOSHIBA LiDAR ミドルウェアの開発に携わる羽田野さんに、ミドルウェアの役割や開発の背景、現場導入に向けた課題、そして今後の展望について伺いました。
エンベデッドシステム事業部
    羽田野 和音

エンベデッドシステム事業部
    羽田野 和音

LiDARの可能性を引き出す、TOSHIBA LiDAR ミドルウェアとは

ーまず、LiDARがどのような技術なのか教えてください。
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LiDARとは「Light Detection and Ranging」の略で、レーザー光を照射して対象までの距離を測り、周囲の形状を三次元で捉える計測技術です。距離情報を扱えること、暗闇でもデータを取得できることが強みです。

ーTOSHIBA LiDAR ミドルウェアは、どのような背景から開発されたのでしょうか?
開発の背景としては、LiDARで取得できるデータ量が非常に多く、そのままでは活用しづらいという課題がありました。

通常は、適用先のシステムに応じてデータを整形・変換し、判断に使いやすい形にする必要があります。そこで当社のTOSHIBA LiDAR ミドルウェアでは、こうした処理をさまざまな用途で活用しやすい形にパッケージ化しています。

お客様がよりスムーズに活用でき、早期に市場投入できるようにすることを目的として、開発をスタートしました。

ー製品の役割を一言で表すと、どのようなものになりますか?
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現実空間とデジタル空間をつなぐ橋のような存在だと考えています。LiDARのハードウェアはあくまでセンサーであり、取得した点群データも、そのままではなかなか使いづらいものです。

本ミドルウェアは、ユーザーのニーズに合わせてデータを整形・変換し、AIを用いて物体検出や追跡を行います。LiDARで取得した生のデータを、実運用で活用しやすい情報へと整形・変換することで、現実空間とデジタル空間の橋渡しを担うものだと捉えています。

なぜLiDARだけでは足りないのか─現場導入を阻む課題

ー従来のLiDARを現場で活用する際、どのような課題がありましたか?
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従来のLiDARでは、取得データを活用するために、お客様ごとの個別開発が必要になることが多くありました。お客様が工数をかけてシステム開発を行うため、実証や市場投入までに時間がかかってしまう場合があります。

また、LiDARから得られるデータは点の集まりです。そのままでは、それが何であり、どの方向に動いているのかが分かりづらく、制御や判断に活用するには高度な処理が必要です。

そこで、難しい部分をあらかじめパッケージ化し、すぐ使いやすい状態にしておくことが、本ミドルウェアの役割だと考えています。

ー導入面やコスト面では、どのようなハードルがあったのでしょうか。
コストの課題は金銭面だけでなく、導入前の検証工数にも関わります。お客様ごとにやりたいことが異なるため、従来は「まず試してみたい」という段階でも、それぞれに開発が必要でした。汎用的なベースを用意しておくことで、お客様はすぐに試せるようになり、効果が見えれば市場に出すまでの時間も短縮できます。

空間認識を“使える機能”へ─コア技術の全体像

ー点群データから対象を識別する仕組みについて教えてください。
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取得される点の分布や形状は、物体ごとに特徴があります。その特徴をもとに、対象物を識別するアルゴリズムを用いています。LiDARは距離を測るセンサーですが、本ミドルウェアによって「点の集まり」を「意味のある情報」に変えていくことが重要になります。

ー3Dの距離情報に加えて2D情報を組み合わせることで、どのような違いが生まれますか?
大きな違いは、認識精度の向上です。3D情報と2D情報には、それぞれ得意な部分と不得意な部分があります。3D、つまりLiDARの強みは、距離情報を取得できること、そして暗闇でも利用できることです。一方で、雨や霧の影響によってデータの精度に誤差が出ることがあります。

2D情報は、LiDARのみで取得した赤外画像のことを指し、主に画像処理によって扱われます。カメラの分野では長年研究が進んでおり、映っているものが何かを抽出したり、意味を見出したりしやすいという強みがあります。暗い場所では映りづらい弱点もありますが、3Dと2Dを組み合わせることで、そこに何があり、どう動いているのかをより正確に把握できるようになります。

ー認識精度を高めるために、どのような工夫をされていますか?
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詳細はお話しできない部分もありますが、複数のアルゴリズムを組み合わせて、機能向上や精度向上を図っています。製品化にあたっては、一つひとつのアルゴリズムについて、どのような強みがあり、どのような組み合わせで効果を発揮できるのかを理解する必要があります。

私自身、プロジェクトに途中から参画したことによる難しさもありました。基礎研究に近い部分を自分で調べ、理解しながら製品化につなげていく点は非常に難しく、苦戦した部分でもあります。

研究技術を現場品質へ。製品化で求められた取捨選択

ー研究所の技術を製品レベルに落とし込むにあたって、どのような課題がありましたか?
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研究所で使われていた技術検証用のコードは、さまざまなユースケースに対応するため、多くの処理が複雑に絡み合っていました。そこから製品として提供するにあたり、どこまでを汎用機能としてサポートし、どこからを個別対応にするのか。その取捨選択が大きな課題でした。

本ミドルウェアは、ハードウェアだけでなく、お客様のアプリケーションとも接続する部分になります。インターフェースの自由度を高くしすぎると、かえってお客様が使いづらくなってしまいます。そのため、重要な設定項目に絞り、使いやすさを担保する必要がありました。一方で、どこまで共通化し、どこから個別対応にするかは、今も難しいテーマです。

ー現場で使える品質にするために、難しかった点はありますか?
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実運用では、屋外での長期運用が想定されます。その中では、天候の変化やハードウェアの異常など、さまざまな異常状態が起こり得ますので、異常が起きたときに適切な処理を行い、復帰動作まで担保することが求められます。

そのためには、複雑な処理を漏れなくカバーしつつ、仕様を整理し、ログ出力やエラーハンドリングを行う必要があります。開発やテストを進める中で、想定外の対応が見えてくることもあります。品質を担保するという点は、非常に難しい部分だと感じています。

ー開発を進める中で、特にやりがいを感じたことを教えてください。
想定されているターゲットが社会インフラ向けであり、人々の生活に関わるシステムを開発しているという点に、大きなやりがいを感じています。一方で、人の命や安全に関わる可能性がある以上、生半可なものを世に出してはいけないという緊張感もあります。

このプロジェクトでは、要件定義や設計から、コーディング、テスト、評価まで、一連の開発を経験できました。大変なことも多くありましたが、その分やりがいのある経験でした。自分の技術が世に出て、人々の生活や安心安全につながっていけばうれしいと思っています。

導入によって何が変わるのか─現場での活用と効果

ーTOSHIBA LiDAR ミドルウェアを導入すると、現場はどのように変わると思いますか?
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本ミドルウェアを導入することで、LiDARが取得した情報を現場で活用しやすい形に整形・処理できます。単にデータを表示するだけでは、現場での判断にはつながりにくいものです。

本ミドルウェアによって、「何がどこにあるのか」「衝突する可能性があるのか」といった必要な情報を見極めやすくなります。その結果、異常監視の自動化や省人化、安全性の向上につながると考えています。危険な場所に人が行かなくても、LiDARを設置しておくことで監視できるようになる点も大きな価値です。

ー特に効果が出やすいユースケースは、どのようなものを想定されていますか?
主に三つあります。一つ目は、産業車両やロボットの周辺認識です。二つ目は、ITSなどのモビリティ分野。三つ目は、ドローン点検やインフラ監視における周辺認識です。

例えば産業車両では、周辺認識がない状態で大きな車両を動かすと、運転者の目だけでは把握しづらい死角が多く、事故の危険があります。TOSHIBA LiDARとTOSHIBA LiDAR ミドルウェアを搭載することで、その死角を減らし、危険なものを検知できれば、事前に衝突を防ぐことにつながります。

インフラ監視の分野でも、飛来物や落下物など、空間全体を捉える場面で活用できる可能性があります。人が常時見守ることが難しい場所でも、安全性の向上に貢献できると考えています。

空間認識技術のこれから─実現したい未来とは

ー技術として、今後どのような進化を目指していますか?
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今後は、TOSHIBA LiDAR ミドルウェアで培ってきた認識技術を、LiDAR以外のセンサーにも応用できるよう、さらに進化させていきたいです。例えば、3DカメラやBluetooth、その他の距離測定センサーなどにも応用できる可能性があると考えています。

現実の社会をデジタル空間に転写するインターフェースとして、将来的には未来予測や高度な判断につなげるなど、さまざまな応用が期待できます。

ーこのTOSHIBA LiDAR ミドルウェアを通じて、どのような社会を実現したいですか?
人々が安心して暮らし、働ける社会を実現できればいいなと考えています。社会インフラに関わる技術として、人々の役に立ちたいという思いがあります。TOSHIBA LiDAR ミドルウェアは、そうした社会の実現に貢献できる技術だと思っています。

ー最後に、読者へのメッセージをお願いします。
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LiDARはまだまだ発展途上の技術ですが、社会や暮らしをより良くしていく可能性を持った技術だと思っています。すでに社会インフラからモビリティまで、さまざまな分野で活用が広がり始めています。

この記事を通して、LiDARの技術に少しでも関心を持っていただき、その可能性に触れていただければうれしいです。


※記事内における内容、組織名などは2026年6月公開時のものです。
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