東芝情報システム株式会社

SWIR ToFカメラ×Liquidseekerによる、非接触・複数液体対応の漏液検知システム

漏水や薬液漏れは、発生後に対応が遅れると設備停止や品質低下につながるリスクがあります。従来の漏液検知テープなどの方式では、設置場所やメンテナンス、検知できる範囲に制約があり、現場全体を十分にカバーすることが難しいケースもありました。

こうした課題に対し、本システム 「漏水・薬液検知 SWIR(スワイア) 3Dカメラシステム」であれば、非接触かつ広範囲での漏液検知が可能になります。本システムは、住友商事が企画したSWIR ToFカメラ「漏水・薬液検知 SWIR 3Dカメラ」と、東芝情報システムが開発した漏液検知アルゴリズム「Liquidseeker(リキッドシーカー)」で構成されています。

今回は住友商事株式会社の趙さんと、東芝情報システムで開発を担当している富樫さんに、本システムがどのような思想と役割分担のもとで構成されているのかを伺いました。
住友商事株式会社		趙 婉言 氏(右)
LSIソリューション事業部	富樫 政寛(左)

住友商事株式会社 趙 婉言 氏(右)
LSIソリューション事業部 富樫 政寛(左)

従来の漏液検知には限界があり、非接触という選択が求められていた

ー現場では、漏液に関してどのような課題がありましたか?
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趙さん:
半導体工場などの現場では、漏水検知テープを使うケースが多いと思います。ただ、テープは断線や剥がれが起きやすく、誤検知につながりやすいのが悩みです。
また、テープに水が到達しない限り検知できないため、気づくまでに時間がかかり、検知後に「どこから漏れたのか」を特定するのに手間取ることがあります。さらに、水以外の液体の判別が難しい点も課題でした。

富樫さん:
漏水検知テープは、一定の割合で誤検知を起こすことがあります。そうなると、実際にどこで漏れているのかを目視で追っていく必要があり、人手と時間がかかります。その分のコストは無視できないという声をお客様から聞くこともありました。
その点、本システムであれば漏水をリアルタイムで検知できるので、導入コストはテープより高かったとしても、長期的に見るとメンテナンスコストを抑えられると思います。

ー従来の検知方式について、どのような点に限界を感じられていましたか?
趙さん:
テープは“線”で引く発想なので、どうしても検知できる範囲が限定されてしまいます。本システムはカメラから最大3メートルの距離、検出範囲は3×3(9平米)まで観測できますので、広範囲の監視・検知が可能です。
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富樫さん:
従来のテープ方式は、液体に接触しないと検出できないタイプがほとんどです。その場合、漏れた薬液によってはテープが腐食や劣化していまい、漏液を検知した後に貼り換えが必要になることがあります。
せっかく導入しても、貼り換えが発生してしまう。要は使い捨てになってしまうところにも、テープ式の限界を感じていました。

ー漏水検知システムは、どのような価値をもたらすと思いますか?

趙さん:
漏れた液体の量が微量でもエリアで検出できるので、異常の早期発見を実現します。漏液が原因の事故による経済的損失を防ぐ意味でも、本システムを導入していただく価値は十分にあると思います。

富樫さん:
本システムはSWIR ToFカメラによってリアルタイムで常時監視するため、漏液の発生場所がすぐにわかるようになっています。従来のテープ式のように、検知場所を確認するために人が出向く必要がないのは大きなメリットだと考えています。

SWIR ToFカメラは、人の目には見えない液体の存在を捉えられる

ー住友商事の「SWIR ToFカメラ」とは、どのような特性を持つカメラなのでしょうか?
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趙さん:
ToF(Time of Flight)は光を照射し、反射光が戻ってくるまでの時間差から距離を測るカメラです。SWIR(短波長赤外)光は、900〜2500ナノメートルの波長帯で、水がよく吸収する特性があります。
住友商事のSWIR ToFカメラは、このSWIRとToFを組み合わせることで、「液体があるか」だけでなく「どこにあるか(距離・位置)」も含めて捉えられます。

ー「SWIR ToFカメラ」と可視光カメラの違いを教えてください。

趙さん:
可視光カメラだと、水なのか薬液なのか、見た目が似ている場合は識別が難しいことがあります。一方、SWIRなら物質の違いを吸収性・反射特性に基づいて識別できます。水分を黒く映す特性を持ち、従来のカメラでは難しかった液体検知や異物検知、素材識別を実現します。また、可視光カメラでは見えない暗闇の中で漏液を観測できる点も、SWIR ToFカメラの特徴です。

ーカメラ単体だと難しい点はありますか?

趙さん:
カメラ単体だと「液体があること」は検知できるのですが、「何の液体なのか」まで識別することはできません。今回、東芝情報システムさんのアルゴリズムと組み合わせたことで、液体の検知に加えて、液種を識別できるようになりました。

Liquidseekerは、映像データを基に液体の種類を識別する

ーLiquidseekerは、漏液検知においてどのような役割を担っていますか?
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富樫さん:
カメラに映り込んだ情報から液体を見つけ、3D情報で位置も把握します。さらに、その液体が水なのか薬液なのか、そういった情報をリアルタイムに識別し、「危ない液体かどうか」をお客様が短時間で判断できるようにする役割を担っています。

ー水・油・薬液など、液体の種類を識別できる仕組みについて教えてください。

富樫さん:
Liquidseekerは、SWIRの波長帯を利用したアルゴリズム(ソフトウェアIP)です。カメラ映像をデータ分析すると、液体によって光の吸収度が違うことがわかりますので、それを基に種類を識別しています。

ー誤検知を抑えるためには、何が重要だと思いますか?

富樫さん:
カメラには、歩く人の姿や物の動きなども映ります。そういった時に液体が流れているのか、それとも液体以外のものが動いているのか、しっかり識別することが必要です。液体とそれ以外のものでは光の吸収度が異なりますので、Liquidseekerなら「液体が流れています」、「これは液体ではありません」のように、明確に識別できます。

カメラとアルゴリズムを組み合わせることで、実用的な検知が成立した

ー今回の取り組みでは、どのような役割分担を意識していましたか?
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趙さん:
カメラを中心としたハードウェアに関する部分や事業化、そして顧客展開は住友商事、Liquidseekerのアルゴリズムは東芝情報システムさん、という役割分担です。そのほか、漏液検知システム全体の評価・検討などのプロセスは両社で協力して行っています。

富樫さん:
ハードウェア視点かソフトウェア視点かなど、求められる内容はお客様によって異なります。たとえばカメラに関する相談は住友商事さん、アルゴリズムに関する話なら東芝情報システムのように、お客様の声を両社で共有しながら進めています。

ー単体ではなく、組み合わせることで生まれた価値は何でしょうか?

趙さん:
今回、私たち単独ではなかなか実現できなかったことを、東芝情報システムさんと共同開発することで達成できました。住友商事はハードウェアの部材調達を担っていますが、センサーという部材があるだけでは、それをどの用途にどう適用し、どう価値に変えるかというコンセプト設計がないと、製品として形にしづらい。結果として、売れる領域も限られてしまいます。
今回は、私たちが扱うセンサーを活用しつつ、東芝情報システムさんと組むことで、はじめて製品として成立させることができました。センサー単体では到達しにくい製品化まで持っていけたことが、組み合わせる価値だと考えています。

富樫さん:
SWIR ToFカメラとLiquidseekerを搭載した3Dカメラシステムのポイントは、大きく2つあります。
1つ目は、設置性とコストです。従来のSWIRカメラは、光を照射する光源が外付けになるケースもありますが、本システムはカメラ内に光源と受光部を一体化しています。そのため省スペースで設置できるうえ、従来のカメラに比べてコストも抑えて作れることが特徴です。
2つ目は、導入後すぐに使えることです。Liquidseekerの技術によって、液体の検出や識別を行う仕組みをカメラ内部に組み込んでいます。つまり、本システムを購入いただければ、その場で液体検出を始められる点が大きなメリットだと考えています。

ー組み合わせる際に気をつけた点や工夫した点を教えてください。
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趙さん:
共同開発なので、まず意識したのは2社間の情報共有の徹底です。開発の進捗だけでなく、実際のお客様の声や現場で得られた気づきをこまめに共有し、意思決定の材料をそろえてきました。

富樫さん:
住友商事さんが取り扱っているSWIRセンサーや、ToFカメラの性能を、いかに最大限に活用してユーザー視点で作れるか、という点を工夫しています。
一般的に、カメラで画像データが取れるため、画像処理やAIを使って判定・識別するアプローチが注目されがちです。ただ東芝情報システムとしては、あえてAIを選択せず、統計的なデータ処理によって識別する技術を開発し、計算負荷を抑えることで、カメラ内部へのLiquidseekerの実装を実現しています。
この設計の最大のメリットは、お客様がカメラを導入した後に、大量の学習データの準備や学習モデルの作成に、多くの時間を割く必要がありません。つまり「買ってすぐ使える」状態を最初から提供できる。そこを重要なポイントとして考えています。

非接触・広範囲の漏液検知が、多様な現場での活用を可能にする

ー漏水検知システムは、どのような現場・分野で活躍すると考えていますか?
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趙さん:
水漏れ・薬液漏れが起きてはいけない、様々な場所での活用できると思っています。現在は半導体工場を中心に考えていますが、食品工場や化学系の現場、将来的にはデータセンターなどにも広げていきたいです。

富樫さん:
東芝情報システムとしては、展示会でのヒアリングも重要な取り組みとして進めています。2025年11月に展示会へ初出展し、来場される方々の声を直接聞く活動を始めました。そこで、当初想定していた半導体工場以外にも、さまざまなニーズがあることが分かってきています。
そうした現場の声を踏まえながら、量産に向けてアップデートを進めています。来年度も、さまざまな展示会に出展していく予定です。半導体工場向けの展開は継続しつつ、それ以外の分野でも、漏水や薬液漏れといった課題を抱えている現場は多いと思うので、将来はそうした領域にも幅広く展開していければと考えています。

ー導入・運用の観点から見た強みや支援体制について教えてください。

趙さん:
半導体工場を例に挙げると、仮に工場の1ラインに機器を一通り取り付けるとなると、100台規模になる可能性があります。その場合は投資額が高額になることも考えられるので、導入のハードルになり得ると感じています。
そこで、住友商事グループのリース会社を活用し、購入ではなくリースで導入できる形を検討中です。お客様に一括で投資額をご負担いただくのではなく、月額のリース料で無理なくお支払い、といった形であれば導入の心理的なハードルを下げられるのではないかと考えています。
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富樫さん:
カメラや販売に関する話であれば、住友商事さんが中心に動いていただくべきかなと思います。一方で、カメラ内で行う処理、たとえば液体の識別や検出精度、物体を正しく切り分けられるかといった技術面は、東芝情報システムが責任を持って動きます。
初期のアプローチは、それぞれの立場で動く場面もあると思いますが、お客様によってはカメラの視点とアルゴリズムの視点、または両方に対して問い合わせがきますので、連携してアプローチしていくことがとても重要だと思っています。

今後の展開について

ー国内外への展開について、どう考えられていますか?
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趙さん:
まずは国内でのアプローチを進める予定です。今後は海外にも展開を広げ、台湾・韓国・アメリカ・ヨーロッパなどでも、本システムの販売を拡大していきたいと考えています。

富樫さん:
販売は住友商事さんを中心に進めていく想定ですので、東芝情報システム単独で国内外の展開を推進するというより、住友商事さんと連携しながら進めていきます。そのうえで、さまざまなユースケースを集めていくと、海外でもニーズがあることが見えてくると思っています。住友商事さんと情報を共有しながら、ニーズのある国・地域に展開していければ、事業としてさらに確立していくと考えています。

ー最後に、導入を検討している方へメッセージをお願いします。
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趙さん:
今回、住友商事と東芝情報システムさんが共同開発した漏水検知システムは、非接触でリアルタイムに、しかも広範囲を常時監視できる点が特徴です。従来のテープ式の検知方式と比べても、運用の効率化につながるソリューションだと考えています。
漏水・漏液を早期に検知できれば、工場全体の安全性向上につながり、重大事故の予防にも役立ちます。半導体工場に限らず、幅広い業界で活用できると思いますので、ぜひ導入をご検討いただければ幸いです。

富樫さん:
本システムの開発にあたっては、市場をどのように開拓すべきか、どのような形であればお客様に価値を感じていただけるのかといった企画段階から、住友商事さんと数年かけて議論を重ねてきました。
そうした積み重ねの上で、ようやく企画が形になり、商品として世の中にお見せできる段階に来たというのが実感です。決して1〜2年でできたものではなく、数年にわたるディスカッションで培ったノウハウや知見が詰め込まれています。
このSWIR ToFカメラを、漏液検知システムとして実用的な形まで落とし込んで提供している例は、現時点ではまだ限られています。ぜひ、東芝情報システムと住友商事さん双方の知見を盛り込んだ本システムを、実際の現場で活用していただければと思います。


※記事内における内容、組織名などは2026年3月公開時のものです。
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