自然界の情報をデジタルに変える!アナログ技術で社会を支える「アナログICターンキー・サービス」の最前線
お客様の要望に合わせてカスタマイズしたアナログICを供給する「アナログICターンキー・サービス」。当社は、2009年に本サービスを開始して以来、幅広い技術力をもった人材を強みとして競争力を高めてきました。本記事では、国内でも実施できる企業が少ない「アナログICターンキー・サービス」の概要とその強み、人材育成で大切にしていることや将来の展望などについて紹介していきます。


LSIソリューション事業部
小玉 哲
はじめに「アナログIC」とは何かを説明してもらえますか?
IC(集積回路)には、大きく分けてデジタルICとアナログICがあります。デジタルICは、「ゼロとイチの断続的な値」を処理(デジタル処理)しますが、アナログICは光や音、熱、振動、運動など、「自然界の連続的な値」を処理(アナログ処理)します。
私が若手の技術者にアナログとデジタルの違いを説明するときは、その違いを人の体に例えるようにしています。たとえば人間の脳は、デジタル処理を行う器官。一方で手足や内臓など、脳以外の器官はアナログ処理を行う器官だと説明するのです。アナログ処理を行う器官は、目や耳で自然界の情報を感じて脳に送ったり、脳が発した処理信号を、手足を動かす運動エネルギーに変換したりします。
目で見た景色や触った感触、耳で聞いた音といったアナログ情報は、脳でデジタル情報に変換され処理されています。つまり、自然界の情報を認識したり、自然界に影響を及ぼしたりするためには、必ずアナログ情報の処理や制御が必要になるのです。こうして例にしてみると、アナログIC分野がどれだけ幅広く、私たちの身の回りにあるのかわかってもらえるのではないでしょうか。
もう少し具体的に、私たちの生活に欠かせないデバイスとなったスマートフォンを例にしてみましょう。音声認識やタッチパネル、方向認知、カメラなど、機能の多くがアナログ処理を必要としています。この機能を実現するためには、必ずアナログICが必要になるのです。
私が若手の技術者にアナログとデジタルの違いを説明するときは、その違いを人の体に例えるようにしています。たとえば人間の脳は、デジタル処理を行う器官。一方で手足や内臓など、脳以外の器官はアナログ処理を行う器官だと説明するのです。アナログ処理を行う器官は、目や耳で自然界の情報を感じて脳に送ったり、脳が発した処理信号を、手足を動かす運動エネルギーに変換したりします。
目で見た景色や触った感触、耳で聞いた音といったアナログ情報は、脳でデジタル情報に変換され処理されています。つまり、自然界の情報を認識したり、自然界に影響を及ぼしたりするためには、必ずアナログ情報の処理や制御が必要になるのです。こうして例にしてみると、アナログIC分野がどれだけ幅広く、私たちの身の回りにあるのかわかってもらえるのではないでしょうか。
もう少し具体的に、私たちの生活に欠かせないデバイスとなったスマートフォンを例にしてみましょう。音声認識やタッチパネル、方向認知、カメラなど、機能の多くがアナログ処理を必要としています。この機能を実現するためには、必ずアナログICが必要になるのです。

では次に、「アナログICターンキー・サービス」について解説してもらえますか?
アナログICターンキー・サービスとは、アナログICを設計・開発し、お客様に提供するサービスです。アナログICには、汎用的なものからカスタマイズしたものまで、さまざまなものが含まれます。当社のアナログICターンキー・サービスは、お客様の要望を盛り込んだ「お客様のためだけにカスタマイズしたアナログIC」を提供するサービスです。
お客様によっては、汎用品のアナログICではオーバースペックだったり、逆に機能や特性が物足りなかったりする場合があります。当社のアナログICターンキー・サービスは、お客様が抱える細かな部分の課題を解決(必要とされる機能や特性の実現)することを目的とし、アナログICを提供するものです。本サービスでは、基本的にお客様ごとにアナログICを開発・製造するので、同じものを他社に供給することはしません。
当社はこのサービスで、さまざまな分野で使えるアナログICを提供しています。たとえば、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する「パワーIC」は、産業機器のモーター駆動などに使われています。「電源IC」は、発電所からの大規模電力をさまざまな電気機器に適切に分配します。「エナジーハーベストIC」は、微小電力でアナログ情報をセンシングするようなIoTのエッジ機器に使われています。
お客様によっては、汎用品のアナログICではオーバースペックだったり、逆に機能や特性が物足りなかったりする場合があります。当社のアナログICターンキー・サービスは、お客様が抱える細かな部分の課題を解決(必要とされる機能や特性の実現)することを目的とし、アナログICを提供するものです。本サービスでは、基本的にお客様ごとにアナログICを開発・製造するので、同じものを他社に供給することはしません。
当社はこのサービスで、さまざまな分野で使えるアナログICを提供しています。たとえば、電気エネルギーを運動エネルギーに変換する「パワーIC」は、産業機器のモーター駆動などに使われています。「電源IC」は、発電所からの大規模電力をさまざまな電気機器に適切に分配します。「エナジーハーベストIC」は、微小電力でアナログ情報をセンシングするようなIoTのエッジ機器に使われています。

アナログ回路を設計できる技術者の人材育成について教えてください。
アナログICはこれほど身近で幅広い分野に使われていますが、国内でアナログICターンキー・サービスを提供できる会社は少ないといわれています。その理由は、人材育成に時間がかかるからです。アナログの回路設計は分野によって必要とされる機能や使う部品がまったく違うため、技術者育成には10年近くかかるのが通常です。技術者として「回路の引き出し(知識)」を多く持っていなければ、お客様の要望に応じたアナログICは提供できません。また在籍している技術者自体が少ないので、後進の育成も困難です。このため、多くの会社ではアナログの回路を設計できる技術者が非常に少なく、アナログICターンキー・サービスは提供し難いのです。
ではなぜ当社でアナログICの設計ができる人材を育成できているかというと、デザインソリューションビジネス(半導体の回路設計ビジネス)として多くの企業から回路設計を受託しているからです。このご依頼にはアナログICはもちろん、デジタルICや両方をミックスしたミックスドシグナルICが含まれます。つまり日本にある数多くの半導体を取り扱う会社から、さまざまなICの設計を受託しているため、技術を実践で習得する機会が豊富にあるのです。
アナログ、デジタル、そして幅広い分野で、多くの回路設計を行ってきた実績が当社の強みです。また設計だけでなく、半導体の製品企画から製造まで一貫して取り扱える知識を備えているため、「これならお客様のICを実現できる」と自信をもって提案できるのです。
ではなぜ当社でアナログICの設計ができる人材を育成できているかというと、デザインソリューションビジネス(半導体の回路設計ビジネス)として多くの企業から回路設計を受託しているからです。このご依頼にはアナログICはもちろん、デジタルICや両方をミックスしたミックスドシグナルICが含まれます。つまり日本にある数多くの半導体を取り扱う会社から、さまざまなICの設計を受託しているため、技術を実践で習得する機会が豊富にあるのです。
アナログ、デジタル、そして幅広い分野で、多くの回路設計を行ってきた実績が当社の強みです。また設計だけでなく、半導体の製品企画から製造まで一貫して取り扱える知識を備えているため、「これならお客様のICを実現できる」と自信をもって提案できるのです。
人材育成で大切にしていることは何でしょうか?
アナログICの設計・開発は難しい技術なので、最初の頃は高いハードルにぶつかることもあります。一方で、先輩技術者は同じ道を歩んできているため、若手技術者が直面するあらゆる課題に共感できます。だからこそ先輩社員は若手技術者に寄り添って、手取り足取りで教育するようにしています。
経験豊富なエンジニアが若手に寄り添い、少しずつチャレンジさせて技術を習得させているので、壁にぶつかって孤立するようなことはありません。大切なのは失敗を繰り返してもいいんだと、若手に認識させることだと思っています。新しいこと、難しいことにチャレンジできる社風であることが、長い目で見て優秀な技術者を育成するために、大事だと考えています。
アナログICの開発技術者になるには、特殊な技能は必要ないと思います。やる気と我慢強さ、そして好奇心があれば、誰でもなれると思っています。私自身、何も知らないところから「なんだかおもしろそうだ」と感じてアナログICを学び始めて今に至ります。また、海外で活躍したいという方にもアナログICターンキー・サービスは向いています。アナログIC製造を委託している外部パートナーはヨーロッパや東南アジアに多いため、そういったパートナーのもとへ足を運び、コミュニケーションを取る機会も多くなります。
経験豊富なエンジニアが若手に寄り添い、少しずつチャレンジさせて技術を習得させているので、壁にぶつかって孤立するようなことはありません。大切なのは失敗を繰り返してもいいんだと、若手に認識させることだと思っています。新しいこと、難しいことにチャレンジできる社風であることが、長い目で見て優秀な技術者を育成するために、大事だと考えています。
アナログICの開発技術者になるには、特殊な技能は必要ないと思います。やる気と我慢強さ、そして好奇心があれば、誰でもなれると思っています。私自身、何も知らないところから「なんだかおもしろそうだ」と感じてアナログICを学び始めて今に至ります。また、海外で活躍したいという方にもアナログICターンキー・サービスは向いています。アナログIC製造を委託している外部パートナーはヨーロッパや東南アジアに多いため、そういったパートナーのもとへ足を運び、コミュニケーションを取る機会も多くなります。
アナログICターンキー・サービスの提供自体が強みと言えそうですが、他にも強みはありますか?
アナログICの少量生産に対応できることも、当社の強みですね。アナログに限らず、ターンキー・サービスを提供できるメーカーの大半は大企業ですが、大企業は自社工場を使ってICを製造するため大量生産をしなければならず、小回り(少量生産への対応)が利かないことが多いのです。当社は自社工場をもたず、外部の工場に製造を委託するファブレス方式を採用しています。この方式では自社工場というコスト負担に縛られないので、お客様の要望に応じて最適な工場を選び、製造ラインを構築することができます。そのため、1度きりの製造でも、年間数千個単位の少量生産でも対応できます。
当社はターンキー事業を立ち上げた当初から、製造を委託する外部パートナーとの関係構築に力を入れてきました。品質や供給力で信頼できる多くのパートナーと、現在も緊密に連携をしています。連携しているパートナーには定期的に監査を行い、品質の担保とセキュリティの確保に努めています。
当社はターンキー事業を立ち上げた当初から、製造を委託する外部パートナーとの関係構築に力を入れてきました。品質や供給力で信頼できる多くのパートナーと、現在も緊密に連携をしています。連携しているパートナーには定期的に監査を行い、品質の担保とセキュリティの確保に努めています。

東芝情報システムは、どのような経緯でこのようなサービスをはじめたのでしょうか?
当社はもともと、デザインソリューション事業で半導体に関わる受託ビジネスを展開していましたので、ICの製品企画から製造まで対応できる能力が備わっていました。当初は東芝グループのためだけにICの開発を行っていましたが、そこから一歩踏み出し、東芝グループ以外のお客様向けに事業を展開し始めました。さらに、長年培った幅広い能力(企画から製造まで)を活かし、社会貢献をしたいと思ったのがアナログICターンキー・サービスの始まりです。
東芝グループ以外のお客様へサービスを始めた当初は、お客様の要望をくみ取るのに苦労しました。当たり前の話ですが、勝手知ったる東芝グループ内ではないので、お客様ごとに仕事の進め方も違ってきます。お客様の要望を正確にくみ取ることができる能力や的確なコミュニケーションができるようになることがチャレンジでした。少しずつ経験を重ねて、今では多くのお客様から信頼をいただけるようになりました。
東芝グループ以外のお客様へサービスを始めた当初は、お客様の要望をくみ取るのに苦労しました。当たり前の話ですが、勝手知ったる東芝グループ内ではないので、お客様ごとに仕事の進め方も違ってきます。お客様の要望を正確にくみ取ることができる能力や的確なコミュニケーションができるようになることがチャレンジでした。少しずつ経験を重ねて、今では多くのお客様から信頼をいただけるようになりました。
アナログICターンキー・サービスで、特に大変だと思うことはありますか?
お客様の要望を必ず実現したいと考えてはいますが、要望のレベルが高いと非常に苦労します。チームメンバー全員の経験を引き出して形にするのは大変な作業です。アナログICは完成させるまでの過程は非常に難しいのですが、それが逆におもしろいところでもあります。すべての経験が次の開発に向けた知識の引き出しとして蓄積されていくのはとてもうれしいことです。
当社はアナログICを試作する段階で、同じ機能でもいろいろな特性を盛り込んで、お客様に使い心地を確かめてもらうようにしています。さまざまな選択肢を用意して、機能をシミュレーションしながら、お客様のイメージにあったICを製造していきます。明確な答えをお持ちでないお客様に対して、さまざまな選択肢を提示して感覚のすり合わせを行い、粘り強いコミュニケーションを通して、要望の解像度を高めていくことができるのも当社の強みですね。こうした試行錯誤を繰り返して、お客様の要望にぴったり合ったものを製造できたときに、とてもやりがいを感じます。
当社はアナログICを試作する段階で、同じ機能でもいろいろな特性を盛り込んで、お客様に使い心地を確かめてもらうようにしています。さまざまな選択肢を用意して、機能をシミュレーションしながら、お客様のイメージにあったICを製造していきます。明確な答えをお持ちでないお客様に対して、さまざまな選択肢を提示して感覚のすり合わせを行い、粘り強いコミュニケーションを通して、要望の解像度を高めていくことができるのも当社の強みですね。こうした試行錯誤を繰り返して、お客様の要望にぴったり合ったものを製造できたときに、とてもやりがいを感じます。
東芝情報システムは、製造中止になったICやLSIを再生する「ディスコンLSI再生サービス」も提供していますね?これについても詳しく説明してください。
当社のターンキー事業において、他社と差別化できるサービスが「ディスコンLSI再生サービス」です。ディスコン(Dis-Continue)とは、ICの製造が中止になることを意味しています。ディスコンLSI再生サービスは、新規のICを開発するのではなく、今まで使っていたのにメーカーの都合によって製造中止になってしまったICを再生し、供給を継続するサービスです。
半導体を製造する会社によっては、生産量(顧客からの注文数量)が少なくなると「ディスコン(もしくはEOL※)」といって、製造を中止してしまうことがあるのです。そうなると、今まで供給を受けていた企業は必要なICを調達できなくなってしまいます。当社の「ディスコンLSI再生サービス」は、このような事情で製造中止になったICを独自の技術で再開発し、再びお客様に供給します。 ※End of Life
またディスコンになったICの中には、何十年も前に設計・開発されたものがあります。お客様から再生してほしいと依頼を受けても、設計図が残っていない場合や、当時の技術者が引退していて技術情報を聞くことができない場合があるのです。そのため当社では、独自の回路解析技術を用いてICの実物から回路を再生させるサービスも用意しています。実物から回路を再生する技術は非常に難易度が高いため、他社ではなかなか提供できないサービスだと思います。
半導体を製造する会社によっては、生産量(顧客からの注文数量)が少なくなると「ディスコン(もしくはEOL※)」といって、製造を中止してしまうことがあるのです。そうなると、今まで供給を受けていた企業は必要なICを調達できなくなってしまいます。当社の「ディスコンLSI再生サービス」は、このような事情で製造中止になったICを独自の技術で再開発し、再びお客様に供給します。 ※End of Life
またディスコンになったICの中には、何十年も前に設計・開発されたものがあります。お客様から再生してほしいと依頼を受けても、設計図が残っていない場合や、当時の技術者が引退していて技術情報を聞くことができない場合があるのです。そのため当社では、独自の回路解析技術を用いてICの実物から回路を再生させるサービスも用意しています。実物から回路を再生する技術は非常に難易度が高いため、他社ではなかなか提供できないサービスだと思います。

ただアナログICの場合、デジタルより特性が複雑なため、機能を再現するために何度も試作を繰り返して再生することがあります。この場合、どうしても開発コストが高くなってしまいます。そこで、ディスコンされたアナログICをそのまま再生するのではなく、ディスコンされていない他の周辺ICと1つのパッケージで再生することもあります。他のICを1つにすることでコストを削減し、提供しやすい価格設定を実現するのです。この方法であれば、使う基板が小さくなるだけでなく、取り込んだICの購入価格を削減することができます。また、他のICのディスコンリスクも軽減できるメリットがあります。こうした付加価値のある提案ができる点も、当社の強みだと思います。
最後に今後の展望について教えてください。
アナログICターンキー・サービスでは、将来必要とされる技術のうち、特にロボティクス分野で使用されるアナログICの開発実績を伸ばしていきたいと考えています。少子高齢化が進行し、この先働き手が少なくなる中で、一部、もしくは全部の作業をロボットが代替するようになるでしょう。我々が強みとしている産業用IC開発の需要は間違いなく高まっていくので、そこをターゲットに事業を伸ばしていきたいです。汎用ロボットではない特殊なロボットも必ず作られていくでしょうから、そのニーズにあったカスタムのアナログICを開発していきたいと考えています。
ロボットアームは良い例ですね。関節の一つひとつにモーターが入っており、それぞれのアナログICがモーターを動かしています。動かし方はお客様ごとにご要望が違うはずで、その要望にカスタマイズされたアナログICが必要となります。当社のアナログICターンキー・サービスは、そんなお客様の要望を実現させたいと考えています。
ロボットアームは良い例ですね。関節の一つひとつにモーターが入っており、それぞれのアナログICがモーターを動かしています。動かし方はお客様ごとにご要望が違うはずで、その要望にカスタマイズされたアナログICが必要となります。当社のアナログICターンキー・サービスは、そんなお客様の要望を実現させたいと考えています。

私たちは、常に「お客様がやりたいことは何なのか」を考えていきたいと思っています。「アナログICを自分たちのシステムに組み込みたいと思っているが、難しくてどういう機能を盛り込みたいかわからない。でもやりたいことはわかっている」という方は、いつでも当社に相談していただきたいです。少ない生産量でも対応できますので、気兼ねなくお声がけください。
※記事内における内容、組織名などは2025年2月公開時のものです。
※本文中の会社名および製品名は各社が商標または登録商標として使用している場合があります。
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