東芝情報システム株式会社

半導体で盛り上がる九州、技術と人材で熱く挑む

九州は、全7県で人口・面積ともに日本全体の約11%、経済規模も10%前後であることから「日本の1割経済」と呼ばれ、3大都市圏に次ぐ経済圏になっています。九州には自動車関連や半導体などの製造拠点が数多く進出し、アジアとの産業交流も活発で、2024年2月に世界最大手の半導体メーカーであるTSMC(台湾積体電路製造)の新工場が熊本に完成し開所式が行われました。当社は、以前から九州に進出している国内屈指の半導体メーカー様と深い関係を築いてきました。今回は当社が2013年に開設した九州拠点の位置付けと、TSMCの九州進出に伴う今後の展望をご紹介します。
九州支店長 村山展彦

九州支店長 村山展彦

九州がシリコンアイランドと呼ばれるのはどうしてですか?

 当社のお客様である日本の大手半導体メーカーが、鹿児島に開発・製造拠点を構えたのが1970年代のことです。九州は半導体製造に必要な良質な水が確保できると言われ、1960年代の後半から大手メーカーの半導体工場が次々とつくられました。水だけではなく、工場用地の確保、各県にある空港を利用した輸送など、好条件が揃っていたことも多くの工場が進出してきた理由です。またこれに歩調を合わせるように、半導体製造装置や半導体材料のメーカーも九州に進出していきました。こうした動きが地元の経済を刺激し、半導体の関連分野に参入する地元企業が増えていったという経緯があります。これらの地元企業は、半導体の開発と製造の両面で技術を向上させることを目標としたことから競争が生まれ、1980年代になると九州がシリコンアイランドと呼ばれるようになりました。

福岡に開設した当社の百道浜オフィスはどのような位置付けなのでしょうか?

 お客様は、2000年代に入ると九州地区での半導体設計・製造体制をさらに加速させ、以前から拠点を構えていた鹿児島、大分、長崎に加えて新たに熊本にも拠点を開設し半導体ビジネスの革新的な取り組みを推進していきました。リーマンショックの影響で半導体業界全体に翳りが見えた2010年代はじめでしたが、当社は、お客様が手掛けていたCMOSイメージセンサーの設計拠点が福岡に構えられたことに照準を合わせ、事業の成長を見込んで福岡の百道浜(ももちはま)に進出しました。百道浜オフィスは、お客様から設計業務を請ける形でスタートし、その後、お客様との良好な関係を築きながら九州各地の製造工場にも技術者が常駐して業務を行っていきました。
 半導体工場では、主に製造技術者と設計技術者の2種類の技術者が必要になります。製造技術者は、半導体ウエハのシリコンにガスを吹き付けてエッチング回路をつくるため、製造現場でケミカルの知見を発揮する技術者です。現場に常駐してコミュニケーションを取りやすくしていた方が効率的であることから、当社は長崎、大分、鹿児島にあるお客様の工場に技術者を常駐させるようになりました。一方、設計技術者は必ずしも工場にいる必要はないので、少し離れた福岡の百道浜で対応できました。また、技術者の採用についても、関東で採用した技術者をわざわざ百道浜に異動させるより、地元九州で採用して業務に従事する方が効率的です。百道浜オフィスは、お客様へのサービス向上とリクルート、業務効率向上を目的として開設されたのです。
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TSMCが熊本に進出することを受け、当社の九州進出の意義を教えてください

 新型コロナウイルスが世界的に蔓延してきた頃、世の中は半導体不足になりました。そのような時期、TSMCが熊本に月産4.5万枚の28~22nmプロセスの新工場を建設すると発表しました。日本初となるTSMCの工場は、TSMCと当社との深いつながりがあるお客様が共同で建設するもので、2021年10月の工場建設発表当時、日本政府は総投資額(約8,000億円)の約半分を補助すると表明しました。さらに2022年2月には、投資額が当初の計画よりも約1,800億円多い約1兆円になると再び発表があり、シリコンアイランドの復活に向けて多くの企業や金融機関の動きが活発化することが予想されています。
 このような九州の動きを予想していたわけではありませんが、当社は、以前から東芝の旧大分工場に技術者を送り、半導体デバイスの開発全般に携わっていました。つまり、百道浜にオフィスを構える以前から九州との関わりを深めていたことになります。そのため、TSMCが九州に進出することは当社にとって恰好のビジネスチャンスと捉えることができ、以前からの九州進出はアドバンテージでもありました。その布石として、2022年の秋からお客様の長崎工場で受託対応が始まり、さらに、TSMCが建設中の熊本工場にも技術者が出向いて設備面の対応を行うなど、工場開設以前から既に業務が始まっています。こうした活動では、大分工場時代のプロセス開発や不良解析、歩留まり、フィールド管理・改善などの一連の技術工程ノウハウが活きています。また、2024年の工場実稼働ではこのような製造技術だけではなく、設計技術も当然必要になると考えられ、お客様からはこれまでよりも設計業務の依頼が増えることが予想されます。当社が培った設計ノウハウを発揮するため、百道浜オフィスではより積極的なアプローチの機会が増えることでしょう。
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高等専門学校との関係も含め、半導体技術者の地元採用について教えてください

 独立行政法人国立高等専門学校機構(高専機構)が、九州・沖縄地区の9高専で「半導体人材育成事業」に取り組んでいることから、地元の高専で半導体分野を学んだ学生を採用する点でも百道浜オフィスの存在には意味があります。TSMCは工場稼働に向けて1,200人の新規採用を計画しており、地元では優秀な学生の採用競争も激化すると考えられるので採用拠点が九州にあることはアドバンテージになるはずです。
 従来、当社は産学連携の共同研究を通じて高専とのつながりを築いてきた実績があります。また、九州経済産業局は、半導体産業基盤の強化を目的とした「九州 半導体人材育成等コンソーシアム」を設立しました。このコンソーシアムには高専機構も参加したことから、九州では産学に加えて行政との連携も強化されています。このようなことから、当社はこれまで築いてきたお客様との関係を一層強固なものにし、お客様とTSMCがつくる半導体の新工場で貢献できる体制を、技術面はもちろん、高専生を中心とした地元での人材確保でも加速させていきます。

九州支店のこれからの意気込みをお願いします

 2023年10月に九州最大の見本市である「ものづくりフェア2023」がマリンメッセ福岡で開催され、当社は「LSI評価向け波形特性自動判定サービス」や「風向風速IoTセンサー anemolink®-2D」「光学検査技術 OneShotBRDF®」、「省電力無線メッシュネットワーク」などを出展し、それぞれ好感触を得ました。また、お客様のプライベート展示会にもパートナー企業という位置付けで出展を継続しています。いずれも、TSMCが九州に進出するタイミングを踏まえ、案件の獲得はもちろん、当社の知名度と存在感の向上が目的です。百道浜オフィスの強みは「お客様の近くでご要望に沿った設計支援ができること」、「近隣団体への所属や現地の展示会に出展することで、緻密な情報収集と存在感のアップができること」、「現地の高専や工学系大学の学生が採用しやすいこと」などです。
 当社は、百道浜に開設した九州支店を九州全域に積極的なアプローチをかける拠点として活用し、半導体分野の新規案件の獲得を目指すとともに、産学連携をこれまで以上に深め、優秀な人材を確保してお客様との連携を深めていく所存です。
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