2.1. 自動改札機の券判定に All-Pair 法を適用した第三者検証を提供

駅の画像

開発者自身がシステムのテスト・検証を行うことによる弊害を排除するには、第三者による検証が不可欠です。当社は、独自の第三者検証技術標準をベースに、効率的かつ効果的な高品質検証サービスを提供しています。テストの専門技術者がシステムの特性に合ったテスト戦略を立案し、最適なテスト手法・技法を使用したテスト戦術を用いて検証作業を行います。高い検査網羅度とケース数削減を実現するAll-Pair法などのテスト技法を多くの検証に適用して効果を上げており、今後、さまざまな分野に積極的に応用を図っていきます。

第三者検証の独自技術標準を保有

多機能、短納期、低コストなどさまざまな要求に対応していかねばならないシステム開発ですが、システムやソフトウェアが社会の至るところで活用されるようになり、ユーザーの裾野が拡大していくのに伴い、システムの信頼性や安全性もこれまで以上に重要視されてきています。しかし、ハードウェアの高機能化やソフトウェアの大規模化・複雑化が進む中、品質の確保は極めて難しい問題ともなっています。

一見、十全なシステムテスト・検証が行われているようでも、欠陥は意外なところから発生するものです。とりわけ、開発者自身がテストを行った場合、ここは大丈夫だろうという先入観や思い込み、あるいは想定していなかった使い方をユーザーが行った場合などのテスト漏れによるトラブルが目立っています。しかし、第三者の視点で検証作業を行えば、こうした思い込みを排除でき、より客観的で確実な検証が実施できます。

実際に、実施テスト数は多いが、フィールドに出てからの不具合が発生するという課題をお持ちのお客様も多く、当社では第三者検証のさまざまなサービスメニューを提供しています (図-1)

図-1 当社の第三者検証サービスメニュー

当社は、独自の第三者検証技術標準を使用したサービスを提供しています。この技術標準を適用することによって、技術者個人によりばらつきのあったテスト内容をばらつきのないテスト内容にすることができます。また、 W モデル[4]に従いシステム設計の工程でテスト設計を行うことで、システム設計書の曖昧な記述や矛盾した記述の早期発見ができます。テストでの懸念事項である網羅度と効率を重視し、システムの特性に合わせた計画を立案、それに適したテスト手法・技法やツールを用いることで、高品質の検証サービスを目指しています (図-2)

図-2 第三者検証の全体像

All-Pair法のダブル適用で効率良く高い検査網羅度を実現

自動改札機の券判定ソフトウェアについて、当社の第三者検証サービスによるテスト方法の改善を提案した事例を紹介します (図-3)

図-3 テスト方法の改善事例

自動改札機の券判定ソフトウェアは複雑であり、今回テストケースを作成した自動改札機は、乗車券と特急券を合わせて最大4枚まで投入可能な仕様となっています。

A駅.B駅までの定期券を持っている人がC駅まで行く場合、A駅.B駅間の定期券、B駅.C駅の乗車券、A駅.C駅の特急券の組み合わせが考えられます。乗車券は数十種類、特急券は約十種類と、券種の組み合わせだけでも膨大な数となる上、乗車券と特急券には必ず乗車区間があります。従って、券種の組み合わせと乗車区間の組み合わせをテストケースに盛り込む必要が生じますが、組み合わせすべてを対象にするとテストケース数は10兆通り以上と、現実にはテスト不可能なケース数に上ってしまいます。

これに対処するため、当社はいくつかのテスト技法を適用しました。まず、組み合わせの的確な水準を選ぶために同値分割法と境界値分析を採用しました。加えて、その組み合わせを減らす技法として All-Pair法を採用することで、テストケースの大幅削減を図るという提案を行いました。

同値分割法とは、起こりえる事象をグループ化することであり、境界値分析とは、同値分割によりグループ化した境界の値をテストの値として採用することです。

All-Pair法とは、2因子の組み合わせを 100% 網羅して組み合わせを作成する技法です。2因子間の組み合わせ 100% 網羅が大切なのは、欠陥の多くは単因子と2つの因子による場合がほとんどであるからです。経験に頼ることなくテストケース数の削減を実現するために、 All-Pair法を採用しています。2 因子間の組み合わせを 100% 網羅する技法としては、ほかに直交表がよく知られていますが、 All-Pair法直交表の特性の比較や、使用するツールの特性の評価などから、 All-Pair法の採用を決めました。

今回のテスト提案の特徴としては、 (1) 乗車券と特急券はそれぞれに券種があり乗車区間を持つこと、 (2) 券種と区間の2種類の組み合わせからテストケースを作成する必要があること、が挙げられます。このことから、 All-Pair法の“ダブル適用”を行いました。すなわち、第一段階では、 All-Pair法を適用して“券の組み合わせ”を作成し、それぞれの券を因子として同値分割法と境界値分析を適用した乗車区間を水準として設定しました。さらに第二段階で All-Pair法を“区間の組み合わせ”にも適用し、券種と区間の 2 因子間の組み合わせ網羅度 100%を実現したテストケースを作成しました。

ソリューション事業部と連携した高品質検証サービスの訴求を

同値分割法と境界値分析を使用した水準で計算すると全数組み合わせは約26万ケースに上りますが、 All-Pair法の適用により、約1万8000ケースと 90% 以上もテストケースの削減を実現できました。また、テストケースを作るという観点から仕様書を見ることで不備の発見機会ができて、品質向上に繋がっています。

このように、今回の提案によって All-Pair法の有効性が再認識できました。因子水準を明確に目に見える形で割り出すことで、レビューにより因子水準の妥当性の検証が容易に行え、割り出した因子水準による単因子テストや網羅的なテストの実施が可能となりました。また、 All-Pair法などの組み合わせ技法を適用し、経験と勘に頼ることなく理論的にテストケースの削減を行ったため、フィールドでの過去不具合の 100% 網羅を実現できました。こうしたことから、テストケース削減を行いながらエラー検知率を向上させることが可能であることが分かり、使用したテスト手法・技法の効果を実証できました。

当社は、今回の実績を活かし、自動改札機はもちろん携帯電話、カーナビ、 MFP (複合機)、デジタル家電などの組込みシステム分野、ならびに、 Web アプリケーションや医療、流通・金融、交通などの業務系システム分野への応用を図っていく考えです。

SI系では社内の業務パッケージ開発にテストの専門家として参加し、支援しています。また、組込み分野では、当社のエンベデッドシステムグループの開発ノウハウと当センターの検証ノウハウを融合する形でお客様に検証提案を行い、受注した事例があります。今後、こうしたソリューション事業部との連携も積極的に進め、高品質の検証サービスを提供していきます。

(エンベデッドシステム事業部 鈴木秀直)



[4] コーディング前の設計工程と並行してテストの計画テストの設計を行うことにより、システムの設計エラーの早期発見と手戻りの削減が可能です。従来のV字モデルに対するものです。

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