3.3. 直交表と All-Pair法 - テスト技法

双眼鏡をのぞいている人の画像

最近のソフトウェアは大規模・複雑化してきています。このようなソフトウェアでは、機能のすべて網羅する組み合わせ数は膨大です。このため、ソフトウェアテストでは、 テストケースは多くなり過ぎて、テスト実施が不可能 になることがあります。

このような場合、組み合わせの網羅性を確保した上で、 テストケースを実行可能なレベルまで少なくする ことが、テスト実施のさいの課題となります。

この課題を解決する手法が、直交表All-Pair法 (別名 Pairwise法) です。直交表All-Pair法は、 組み合わせテストケースを合理的に削減 するために使われます。直交表All-Pair法で作成したテストケースでは、 2因子間網羅度が 100% であることが特徴です。

直交表

直交表は、実験計画法や、田口玄一博士による手法タグチメソッド (品質工学とも言う) で使われ、進化してきました。

直交表には、以下のような特徴があります。

直交表の特徴

  • 因子水準が均等に出現する。このため、結果的に 3因子間の組み合わせも平均的に出現する。

  • 扱える因子水準の数に、ある程度制限がある。

  • 既存の直交表では、大きな水準を扱えるものがあまり提供されていない。ただし、作成は可能。

  • 作成されるテストケース数は、直交表のサイズに依存する。最小のテストケース数にならない場合もある。

All-Pair法

All-Pair法は、複数の計算アルゴリズムを使い、2因子を組み合わせます。このとき、なるべく少ないテストケース数となるように組み合わせます。計算アルゴリズムはひとつではないため、使用する All-Pair法のツールによって、結果が異なることもあります。

All-Pair法には、以下のような特徴があります。

All-Pair法の特徴

  • 計算アルゴリズムを工夫し、最小の項目数でテストケースを作成できる。

  • 比較的大きい因子数・水準数まで扱える。

  • 因子水準の組み合わせに、制約 (禁則) や重み付けを設定ができる。3因子以上を網羅した組み合わせが、比較的簡単に作成できるツールがある。

  • 作成する組み合わせに、偏りが出る場合がある。

直交表・All-Pair法における因子・水準の洗い出し

直交表All-Pair法を使ったテストケースを作成するには、まず、因子水準を洗い出します。このとき、いかに漏れのない適切な因子水準の洗い出せるかが重要です。因子水準の洗い出しがテスト品質を左右します。

因子の洗い出しにあたっては、テスト対象となる機能、条件、変数などの項目を抽出します。また、ほかの因子に影響を与える依存関係を検討します。依存関係がないと判断できるものは因子から外すこともあります。

水準の洗い出しの基本は、因子ごとに、そのバリエーションとなる項目を洗い出すことです。連続する値の場合は、同値分割法や境界値分析を用いて水準を設定します。

All-Pair法の使用例

All-Pair法を使ったテストケース作成例を紹介します。

プリンタ印刷設定画面

図9 プリンタ印刷設定画面


図9「プリンタ印刷設定画面」 はプリンタの印刷設定画面の例です。それぞれの設定項目 (因子) と、項目ごとに選択できる値 (水準) を表3「因子と水準例」に示します。

表3 因子と水準例
因子水準
用紙サイズ A4 B4 B5 A3
印刷方向    
給紙装置 自動選択 用紙トレイ    
用紙種類 普通紙 再生紙 厚紙  
印刷品質 きれい はやい    

これらをすべて組み合わせたテストケースを作成すると 4 × 2 × 2 × 3 × 2 = 96通り (表4「すべて組み合わせたテストケース」) となります。

表4 すべて組み合わせたテストケース
No.用紙サイズ印刷方向給紙装置用紙種類印刷品質
1 A3 自動選択 再生紙 はやい
2 A3 自動選択 普通紙 はやい
3 A3 自動選択 厚紙 きれい
4 A3 自動選択 普通紙 きれい
5 A3 自動選択 厚紙 はやい
6 A3 自動選択 再生紙 きれい
...(中略)...
91 B5 用紙トレイ 厚紙 はやい
92 B5 用紙トレイ 厚紙 きれい
93 B5 用紙トレイ 普通紙 はやい
94 B5 用紙トレイ 再生紙 きれい
95 B5 用紙トレイ 普通紙 きれい
96 B5 用紙トレイ 再生紙 はやい

一方、 All-Pair法を使い 2因子間網羅 100% の組み合わせテストケースを作成すると 12通り (表5「All-Pair法 による 2因子間網羅 100% の組み合わせテストケース」) となります。

表5 All-Pair法 による 2因子間網羅 100% の組み合わせテストケース
No.用紙サイズ印刷方向給紙装置用紙種類印刷品質
1 A3 用紙トレイ 普通紙 はやい
2 A3 自動選択 再生紙 きれい
3 A3 用紙トレイ 厚紙 はやい
4 A4 自動選択 普通紙 はやい
5 A4 自動選択 再生紙 きれい
6 A4 用紙トレイ 厚紙 はやい
7 B4 用紙トレイ 再生紙 はやい
8 B4 自動選択 厚紙 きれい
9 B4 自動選択 普通紙 きれい
10 B5 自動選択 厚紙 きれい
11 B5 用紙トレイ 再生紙 はやい
12 B5 用紙トレイ 普通紙 きれい

すべてを組み合わせたテストケースと、All-Pair法により作成したテストケースの数を比べると、 1/8 に削減されています。一般に因子水準が増えるほど削減効果は大きくなります。


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