4.1. 第1回: 既存システムを有効に活用するレガシー・マイグレーション
2010-03-29
国内経済は依然として不透明な状況です。2009 年度は、民需分野を中心に、大幅に IT 投資が絞られています。各企業が TCO (Total Cost of Ownership, 総保有コスト) 削減を進めているなか、新規開発よりもコストを抑えることができるマイグレーションに注目が集まっています。
東芝情報システムが提案する「レガシー・マイグレーション・サービス」について、東芝情報システム サービス & テスティングセンター センター長 千歩孝氏にお話をうかがった。
-- 「レガシー・マイグレーション・サービス」とは何ですか?
メインフレームと呼ばれる大型汎用コンピューターを使ったシステムを「レガシー・システム」と呼びます。
「レガシー・マイグレーション・サービス」は、「レガシー・システム」を、オープン系プラットフォームに移行 (migration, マイグレーション) し、稼働させるものです。オープン系プラットフォームとしては Unix サーバーや、 Windows サーバーを使用します。
「レガシー・システム」の多くは、メイン・フレームの COBOL などで作られています。 オープン系プラットフォームでも COBOL 開発環境が用意されていますが、環境や言語仕様に違いがあり、「レガシー・システム」のソースコードをそのままコンパイル、実行することはできません。また、場合によっては、 Java や C/C++ など COBOL 以外の言語を選択したい場合もあるでしょう。
この COBOL のソースコード、 JCL などを、変換ツールを使いオープン系プラットフォーム用に変換し、同時に環境構築、データ移植を行います。変換したソースコード、 JCL などをオープンシステム系プラットフォームでコンパイルし、実行できるようにす ることで、かつてメインフレーム上で稼働していたシステムが、オープン系プラット フォーム上で稼働できるようになります。
-- 「レガシー・マイグレーション・サービス」のメリットとは何ですか?
4 つあります。「TCO 削減」、「開発コスト削減」、「ノウハウの継承」、「リスクの極小化」です。
-- 「TCO 削減」について説明してください。
メインフレームには、高い信頼性や実績があります。しかし、その一方で、ハードウェアのリース料・保守料、ソフトウエアのライセンス料などの運用コストが高額になることが多く、これが、ユーザーの負担となっています。
一方、テクノロジーの発達に伴い、オープン系プラットフォームの信頼性や機能はメインフレームに近づいてきています。また、価格も安価で、運用コストも低く抑えることができます。
このため、メインフレーム上のシステムと同じか同等のシステムを稼働させることができるなら、 TCO (Total Cost of Ownership, 総保有コスト) を削減することがでるわけです。
-- 「開発コスト削減」について説明してください。
「TCO 削減」の解決策として、「レガシー・システム」の後継システムを、オープン系プラットフォーム上で開発するという方法が考えられます。しかし、大きな「レガシー・システム」をオープン系プラットフォームに構築するには、相当なコストが必要となります。
また、長年運用を続けてきた「レガシー・システム」には、機能追加や仕様変更などの改修を加えていることが多く、仕様が複雑になっています。多くの場合、これがシステムの新規開発の際の障害となります。これが開発コストを上昇させる要因です。
「レガシー・マイグレーション・サービス」では、システムにあまり変更を加えないため、これらのコストを抑えることができます。
-- 「ノウハウの継承」について説明してください。
一般に、「レガシー・システム」は、ユーザーの業務やビジネス・ロジックに合わせて最適化されているため、ユーザーにとって使い易いものになっています。また、長年の運用で蓄積してきたノウハウは、ユーザーにとって貴重な財産となっています。新規システムを作成する場合、これらの利点をすべて捨ててしまうことになります。
しかし、「レガシー・マイグレーション・サービス」では、これらの利点を継承することができます。これは大きなメリットです。
-- 「リスクの極小化」について説明してください。
新規システムには、必ずどこかに潜在的なバグが潜んでいるものです。また、長年、運用されてきたシステムの仕様は複雑化していることが多く、その仕様に沿って作成された新規システムの場合、問題が発生しやすいと言えます。これは、システムの安定性に対する大きなリスクとなります。
また、「レガシー・システム」は、多くの場合、基幹システムです。問題が発生した場合、その影響が広範囲に及ぶ可能性があります。このため、システムの安定性に対するリスクは、ビジネスに対する大きなリスクとなります。
「レガシー・マイグレーション・サービス」では、基本的に現在稼働しているソースコードをそのままストレート変換するため、システムの修正は最小限度にとどめられます。そのため、高い安定性が期待でき、企業ビジネスに対して、リスクを極小化できると考えられます。
-- マイグレーションの手順はどのようなものですか
マイグレーションは、一般に 5 段階の手順で実施されます。「棚卸し」、「調査・分析・移行設計」、「リソース変換・データ移行」、「検証」、「保守」です。
「棚卸し」では、マイグレーション対象となる資産の確定をします。
長年使用されることが多いレガシー・システムは、仕様変更や機能追加に伴い、使われない機能が埋もれていることがあります。また、業務やビジネス・プロセスの変更に伴い、利用されなくなってしまった機能もあるでしょう。
運用管理担当者にすら、システムのどこまでが、実際に使用されている機能なのかを判断するのが難しいと言われています。
そのままの状況では、不要な機能までマイグレーションすることになり、作業のコストを上昇させてしまいます。そのため、マイグレーションは、資産の棚卸しを行い、現状システムにある有効な資産を正しく把握することから始めます。
「調査・分析・移行設計」では、マイグレーション対象となるシステムの現状調査・分析を行い、オープン系プラットフォーム上でどのように実現するのか、変更しなければならない点は何かを明確にします。決定した方針は移行設計としてまとめ、今後はこの設計に基づきマイグレーションを進めていきます。
「リソース変換・データ移行」では、新システム向けにソースコード、 JCL などを変換します。変換は基本的に変換ツールを使用するため、手作業と比べスピーディかつ変換後のバラツキもないため、品質も確保できることがメリットです。レガシー・システムが使用するデータは、この段階で移行します。
「検証」では、テスト計画、テスト設計、検証作業を実施します。オープン系プラットフォーム上に正しくマイグレーションできたかどうかを確認するための検証作業として、照合テストがあります。照合テストとは、レガシーシステムと同一の条件 (日付・データ・処理など) で新システムでも処理を行い、その結果を突き合わせ、双方の内容に相違がないことを確認するものです。その他、総合テストを実施し、運用面・性能面でも問題がないことを確認します。
「保守」では、マイグレーション後のサポートをします。マイグレーション後もお客様に安心してお使いいただける様、サポートさせていただきます。
-- 東芝情報システムのマイグレーション・サービスの特徴はどのようなものでしょうか。
弊社は昭和 37 年に設立されて以来、コンピューターの進歩とともに歩んできた会社です。単にシステムをマイグレーションするだけでなく、長年培った経験と実績をもとにして、棚卸し・分析・設計・変換・テスト・保守運用まで一貫したサービスを提供することができます。
マイグレーション作業において、マイグレーション後の検証作業は非常に重要です。弊社では、この工程をいかに効率的に品質良く仕上げるかということを目標に掲げ、日々取り組んでおります。特に、サービス & テスティングセンターにはテストを専門とする技術部門を抱えています。テストの経験・ノウハウを最大限に活用し、マイグレーション後の検証作業を実施しております。
-- 今後のビジネスについて、お聞かせください。
レガシー・マイグレーションだけでなく、お客様のニーズに合わせた各種マイグレーションを取り組んで行きたいと考えます。
具体的には、ユニシス汎用機からのマイグレーション、オープンシステムからオープンシステムへのマイグレーション、 Lotus Notes (ロータス・ノーツ、または、 Lotus Notes/Domino 、ロータス・ノーツ/ドミノ) から Microsoft SharePoint (マイクロソフト・シェアポイント) へのマイグレーションなどを計画中です。